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承諾なんてしたくなった。

だけど、
私には考える思考がもうなかったんだ。


土方さんは準備をするために、
近藤さんの部屋を後にした。

その部屋には私と近藤さん、
井上さんだけが残っている。

土方さんが部屋から出ると、
近藤さんは目に前に来て、
懐に手を突っ込んだかと思うと
ある物を取り出した。

ジャラッと音を鳴らしながら取り出されたのは、
お金が入った巾着。

近藤さんの財布だ。




近藤「雪村君。
これは逃亡資金に使ってくれ。
君たちには何もしてやれなかったが、
せめてもの気持ちだ。
受け取ってくれるな?」




重そうな巾着を私の手に乗せて、
近藤さんは微かに笑う。

何もしてもらってないなんて思ってない。

私たちを新選組に置いてくれて、
ずっと私たちを守ってくれた。


京から今までの出来事が、
走馬灯のように脳裏を過った。

すると、不思議と口は開かれたんだ。




千鶴「近藤さん、井上さん…。
本当に残られてしまうのですか?
もうお二人には、会えないんですか…?」

井上「いつかまた会えるさ。
大丈夫、信じなさい」

近藤「そうだな。いつかきっと会える。
それが現世でなくても、な。
雪村君。トシの事を、よろしく頼んだよ」




やっぱりいつもと変わらない笑顔で言うんですね。

私がどれだけ言っても、
もうお二人は聞き及んではくれないんですね…。


滲む視界が鮮明になった時、
頬に涙が零れた。


準備が出来たのか、
開かれたままの襖から土方さんが姿を現す。

それは私たちの最後。
もう、お二人に会う事は叶わない事を表していた。




千鶴「お二人は、京での父様のような存在で、
私たちはたくさん救われてきました。
その御恩は一生忘れません。
ここにいないAの分も言わせていただきます。
本当に、ありがとうございました…」




私の言葉に、
お二人は笑顔を絶やさないでいてくれた。

お二人がそうなら、私も笑おう。

Aがいない今、
私がAの代わりに笑顔を向けよう。


あの笑顔には敵わないかもしれないけど、
それでも泣いてのお別れよりはいい。




土方「千鶴、行くぞ」




さようならは言いません。
必ず生きる努力をしてください。

そして、醜くても足掻いてください。


きっと、また会える日を夢見て…。

110:その頃<斎藤一>→←109:兄弟喧嘩の終焉<雪村千鶴>



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斎藤ようこちゃん(プロフ) - 素敵だよ。涙が流れます (2020年5月24日 23時) (レス) id: e53507092f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まほろ | 作成日時:2019年9月26日 17時

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