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腰に回っている右手には、
苦しさを耐えるように力が入っている。
震える左手で近くに置いてあった刀に手を掛けると、
私の体の前でその刀を抜いた。
そして、いつもとは逆の左の耳たぶに傷を付け、
滴り落ちる血を舌で掬いだす。
この感覚はやっぱり慣れなくて、
きつめを瞑って左手で口を塞ぎ、
もう片方の手で
腰に回っている斎藤さんの手を握った。
しばらくすると荒い息遣いが治まり、
滴り落ちる血も止まっている。
耳から口は離れたけど、
ハァッと切ないため息を吐きながら、
斎藤さんは私の首筋に顔を埋めた。
A「落ち着きましたか？」
斎藤「ああ…」
A「どうしました？
何か、言いたそうでしたけど」
そう問うと、
斎藤さんは何も言わず黙ったまま。
だけど顔を上げる事はせず、
私を放そうともしなかった。
短い髪が耳と顔に掛かり、
それがまた、擽ったい。
腰に回っている手をもう一度握り直し、
言葉が出るのを待った。
しばらくその体制のままでいたのだけれど、
握っていた斎藤さんの手が急に離れ、
今度は逆に私の手が握られた。
斎藤「あんたは、左之と何の約束をしたのだ」
A「………へ？」
斎藤「忘れ形見とは、何なのだ」
それは想像を遥かに超える内容だった。
てっきり私は、
こんな夜に縁側に何故いたのか聞かれると思っていたから、
私の口からは間抜けな声が出てしまったのだ。
だけど問いかけをする斎藤さんの声は真剣で、
あの日の出来事の話をする。
私の話が終わると、
斎藤さんはまた、ため息を一つ吐いた。
斎藤「そう、か…」
A「それが、どうかしたんですか？」
斎藤「……いや、気になっただけだ」
A「………？」
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斎藤ようこちゃん(プロフ) - 素敵だよ。涙が流れます (2020年5月24日 23時) (
レス) id: e53507092f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まほろ | 作成日時：2019年9月26日 17時
