【薄桜鬼】純血を巡る者６ (ページ12)

今日:2 hit、昨日:9 hit、合計:71,014 hit

＊＊＊＊ページ12

頭を撫で続けながら、
今度はAを抱きしめる。

しかし原田さんの表情は、
苦し気に見えてしまった。

どんな約束をしたのかは分からない。

だけどきっと、
原田さんは守れないかもしれないと思ってるんだ…。

A「約束です。約束ですからね…っ！」

原田「ああ、約束だ。
だから笑って見送ってくれよ。
お前の笑顔が、俺は好きなんだからよ…」

Aはそっと原田さんから離れ、
袖口で涙を拭いて顔を上げた。

こちらまでもが泣いてしまいそうな程の、
泣き笑いの表情が、そこにはあった。

A「さようならは言いません。
いつか全てが終わったら、必ずお会いしましょう」

原田「ああ、必ずな」

永倉「Aちゃんも無理はすんなよ。
いっつも考えなしに動いちまうからな」

A「永倉さんに言われたくありません」

永倉「んじゃ、俺たちはそろそろ行くわ！」

原田「長々話してても、
別れたくなくなっちまうしな」

二人は屯所の門をくぐろうと歩き出す。

その時、Aが最後に発した言葉に、
意表を突かれてしまった。

A「お二人とも、
いってらっしゃい。お気を付けて！」

原田「………おう！行ってくるわ！」

永倉「またな！」

二人は私たちに手を振った後、
こちらを振り向かずに屯所を後にした。

いってらっしゃい、か…。

なんともAらしい言葉だと思った。

二人の背中が完全に見えなくなると、
Aはその場に泣き崩れた。

千鶴「きっといつか帰って来てくださるから。
だから私たちは、
私たちの出来る事を頑張ろう？」

斎藤「左之も新八も、
新選組の幹部を務めた腕がある。
心配せずとも大丈夫だ。
それに、左之は約束を破るような男ではない」

Aは首を縦に振りながら泣いていた。

しばらく泣き続け、
やっと泣き止んだAは立ち上がり、
屯所の門の先を見つめている。

千鶴「少し、一人にさせてあげましょう」

斎藤「……そうだな」

私たちはAを置いて、
屯所の中へと戻るために歩き出す。

A「＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿」

Aが何かを呟いていたけど、
それは聞こえないぐらい小さなものだった。