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だからこそ、
ここからいなくなってしまうのは…、

寂しくて仕方ない。


お道化た表情から、今度は真剣な、
それでいて少し寂しそうな眼をして
原田さんは呟いた。




原田「……何つうかさ、
今の近藤さんを近くで見てるのって、正直辛いんだよな。
分不相応な玩具貰って
はしゃいでるガキみてえに見えるっつうか…、
空回りしてるってのかな…。
試衛館で馬鹿やってた頃や、
京で不逞浪士を追いかけまわしてた頃は、
そんな風には思わなかったんだけどな」




確かに今の近藤さんは、
原田さんの言った通りだと思う。

私やAはほんの数年、
京での新選組を見ていただけだけど、
あの頃も皆さんは戦いに身を置いていたけど楽しそうで、
今の雰囲気とは全くの別物だった。


もう、あの頃のようには戻れないんだ…。

出来るなら、
あの頃のように戻って欲しかったけど…。

その願いは、散るしかないんだ…。




永倉「……ま、俺たちはこれからも、
薩長と戦い続けるのは変わらねえしさ」

原田「そうそう。別に、
これが最後の別れになるわけじゃねえんだ。
そんな顔するなよ」




そんな顔にもなりますよ。

だって、明日には
どうなるかも分からない時代。

必ずまた会えるという保証は、
何処にもないのだから…。


ここに来て、
一度も口を開かないAを見やる。

Aは涙を瞳いっぱいに溜めていて、
きっと何かを口にしたら
全ては零れ落ちてしまうのだろう。


だけど…。




千鶴「A、これでお別れなんだよ?
何も言わなくていいの?!」




私がそう言うと、
皆さんの視線はAへ注がれる。

Aは驚いたように私を見やると、
ほんの少しだけ俯いて口を開いた。




A「………あれは、
忘れ形見のつもりだったんですか…?」




忘れ形見…?

何の話だろうと思ったけど、
口を挟むのは止めた。


ポロポロと零れだした涙は、
乾いた地面に跡を残していく。




原田「そんなつもりはねえよ。
あれはお前に良く似合うと思ったから贈ったんだ」

A「……私は、あの約束を必ず果たします。
だから原田さんも…、果たしてくれますか…?」

原田「当たり前だろ。
必ず見に行く。だから泣くなよ」




原田さんはAに近づき、
Aの頭を優しく撫でる。

それが合図になったかのように、
Aは嗚咽を漏らしながら泣き出した。

****→←106:二人の脱退<雪村千鶴>



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斎藤ようこちゃん(プロフ) - 素敵だよ。涙が流れます (2020年5月24日 23時) (レス) id: e53507092f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まほろ | 作成日時:2019年9月26日 17時

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