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そう言いたかったけど、
何とか抑えて手振りで
"早く!"と急かした。

顔を反らしたのを合図に、
沖田さんは震える手で差し出した私の手に
小刀を宛がい切った。

チクリとした痛みが走り、手のひらに血が流れる。
その傷に柔らかく、暖かい舌が這う。


少しすると荒い息遣いが治まり、
大きく息を吐く声が聞こえてきた。




千鶴「今、その方はお話をする事が出来ません。
ご了承ください」

原田「話が出来ないって、どういう事だ?」

千鶴「頭領様、当主様方がお待ちです」




頷いて小刀を受け取ってから立ち上がる。

幹部隊士さんたちに小さくお辞儀をして、
先程までいた部屋へと足早に戻った。

そして定位置に座り直すと、
また深々と頭を下げる。




千鶴「申し訳ございません。お困りの方がいらっしゃり、
頭領様のお手を借りなければ助かりませんでしたので
退席させて頂きました。
ご無礼をご容赦くださいますよう、お願い申し上げます」




姉様の謝罪の言葉を聞き届けてから頭を上げれば、
狭い視界から見える当主様方の表情は柔らかく、
特段気にしている様子はなかった。


良かった。

これで反感でも買えば、
面倒臭い事になる所だったよ。




南雲「これより雪村家当主・東国頭領の
襲名の儀を執り行わせて頂きます」




その言葉で襲名の儀が始まる。

少し首を横に動かして向かいの部屋を見れば、
皆さんが不思議そうな顔で
こちらをじっと見ていた。




藤堂「あれ、本当にAかよ…」

原田「女物の着物着てるし、
何より、あの面じゃあな…」

土方「お前らな、
まずはあの異様な物が何なのかを疑問に思えよ」




そうですよね。
異様ですよね。

それは私が一番ヒシヒシと感じています!


襲名の儀は淡々と進み、
私自身も言われた通りの事を熟していく。

そして、やっと喋れる時が来た!




南雲「襲名口上」




その言葉を皮切りに、
畳を見るように頭を下げて口上を行う。




A「皆様にはますますご清栄の御事お喜び申し上げます。
この度、前頭領であられます雪村薫重の勧めにより、
雪村家当主・東国頭領を襲名させて頂く運びとなりました。
雪村薫重様の御心を継ぎ、
頭領としては恥じぬよう精進して参ります故、
何卒、ご指導ご鞭撻を賜ります事を
お願い申し上げます」

千鶴「拝顔」




その言葉を合図に、
襲名の途中で受け取った大通連を持ち、鞘から抜いた。

****→←66:襲名と来賓



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斎藤ようこちゃん(プロフ) - 涙が…溢れて止まりません。 (2020年5月24日 15時) (レス) id: e53507092f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まほろ | 作成日時:2019年9月12日 14時

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