【薄桜鬼】純血を巡る者４ (ページ8)

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黒と赤で染められた着物。
この季節によく似合う
牡丹と桜があしらわれた柄は、
とても綺麗で華やかだ。

菊月「とてもよくお似合いで、お綺麗ですよ」

A「ありがとうございます。
菊月さんの手腕のおかげですよ」

髪も綺麗に結われ、化粧も施された。
赤い紅は見慣れなくて、
まるで七五三に行く子供のように見えてしまう。

千鶴「A、すっごく綺麗！」

A「姉様も、すごく似合ってて綺麗だよ！」

襲名にはしきたりがあって、
頭領には付添人が二人必要だ。

この二人必要な意味は、
簡単に言えば守り人、眷族という事になる。

だから従来であれば前任の頭領である父と、
親族である母がするのだけれど、
両親はもういない。

だから私の付添人は
兄様と姉様が務める事になった。

菊月「A様、こちらを」

菊月さんが差し出したのは般若の面。
これも、しきたり。

襲名の時には頭領は般若の面を、
付添人は狐の面を付ける事になっている。

そして、この般若の面は襲名の挨拶が終わるまで
何があっても取ってはいけない。

しきたりばかりで息が苦しい。
窮屈な事ばかりだけれど、
それを受け入れなければ
頭領にはなれないのだから仕方ないんだ。

南雲「こちらの準備は出来たよ。
そろそろ行こうか」

千鶴「A、ちゃんと分かってるよね？」

A「うん。面を付けたら
襲名の挨拶が終わるまでは声を出してはいけない！」

南雲「分かってるなら大丈夫だね」

A「よし、行こう！
兄様、姉様。よろしくお願いします！」

面を付ける前に三人で最後の微笑みを向け合った。

三人揃って面を付ければ、
髪に刺さっている簪がシャラッと綺麗な音を奏でた。