【薄桜鬼】純血を巡る者４ (ページ33)

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７８：独り言(励まし) ページ33

平助君と斎藤さんが
新選組と去った最初の頃は、
何も手に付かず、
姉様にも皆さんにも物凄く心配を掛けてしまった。

目の前で父様と母様を亡くし、もう二度と、
大切な人たちが自分の目の前から
いなくなって欲しくないと思っていたんだと、
姉様が皆さんに言えば、
皆さんはすごく励ましてくれた。

それからというもの、
皆さんは私の為にと巡察に出る度に
お団子だのお饅頭だのを
今まで以上に買ってきては渡してくれる。

それが申し訳なくて、精一杯明るく振舞った。

それでも食事の時のおかず争奪戦は無くなり、
あの騒がしかった食事は
夢だったのではないかと思えてしまう。

どれだけ神経を研ぎ澄ませて気配を探ってみても、
隣の部屋に人の気配を感じる事は出来なくなり、
夜はこの世に一人、
ポツンと取り残されたような錯覚に陥ってしまう。

そんな生活にも慣れ始めた頃。

土方さんのお仕事のお手伝いをするために、
土方さんのお部屋へ来ている。

土方「だいぶ落ち着いたみてえだな」

A「……？」

土方「いや、独り言だ」

無言で二人、文机に向かって書き物をしていると、
ボソッとそんな事を言い出したものだから、
私も言ってみたくなったんだ。

A「土方さん。
私の独り言、聞いてくれますか？」

土方「それは独り言って言わねえんじゃねえか？
まあいい。聞いてやるよ」

筆は止まらず、向き合う事もない。

横に並んだ文机に真正面から向き合ったまま、
淡々と作業をしながら口を動かした。

A「羅刹が姉様の部屋を襲おうとした時。
何で正気に戻ったんだろうってずっと考えていて、
その理由がどうしても
私の血を飲んだって事しか思い当たらないんです…。
それが能力血で戻ったのか、
鬼の血なら誰でもいいのかは分かりません。
でも、もし私が考えている理由が要請元に知られたら、
私たち鬼は実験台になってしまうんじゃないかと…。
私だけならまだしも、
姉様や他の鬼たちが傷つけられるのは絶えられません。
父様は人との共存を試みて欲しいって、
それが望みだって書いてあったけど…。
正直、今はちょっとだけ人が怖いです…」

土方「それは、俺たちも怖いのか？」

その答えは出ている。

A「新選組の人たちは、怖くないです…。
私の大切な、大好きな人たちだから」