７５：兆し ページ28
慶応３年１月。
姉様と洗濯をし、
干しに行こうと歩いていた。
その途中、階段の所で
沖田さん、永倉さん、原田さん、斎藤さんの４人が
何かを話している。
千鶴「どうしたんですか？そんな顔して」
原田「千鶴にA。
新八と斎藤が伊東さんに接待されたんだと」
A「接待？何のですか？」
永倉「引き抜きの誘いだった」
A「引き抜き、ですか…？」
永倉「今の新選組に不満はねえかとか、
譲位出来ねえ幕府はもう終いだとかさんざん言われて。
挙句、一緒に来ないか。ってな」
何か企んでいるかもしれないとは聞いていたけれど、
まさか、そんな話…。
じゃあ、伊東さんが新選組に名を連ねた理由って…。
いや、そんなはずはない。
同じ志を持った人だって、近藤さんは言ってたもん。
千鶴「永倉さん、何て答えたんですか？」
永倉「しこたま飲み食いさせてもらってから、
どうも、あんたたち相手だと楽しくねえって」
そう、永倉さんは笑いながら言った。
断ったんだ。
良かった…。
沖田「一君も一緒だったんだよね？」
斎藤「ああ…」
斎藤さんは何て答えたんだろう…？
もしかして、同意しちゃったのかな…？
私の懸念は誰にも知られる事なく消えていく。
それは、斎藤さんが何も答えなかったからだ。
誰かの足音が聞こえ、そちらに目を向ければ、
浅葱色の羽織を着た隊士さんだ。
ああ…、また隠れなきゃ…。
私は階段の横へ体を滑らせる。
隊士「沖田組長、巡察の刻限です」
沖田「ああ、はいはい。千鶴ちゃん、行くよ」
千鶴「わ、私、お洗濯が…」
永倉「Aちゃん…、あれ？いない…」
沖田「今行くから、門の所で待ってなよ」
隊士「あ、はい」
沖田さんが指示をすると、
隊士さんの足音が遠ざかっていく。
原田「行ったぞ、出てこいよ」
A「気付かれていませんでしたか？」
原田「大丈夫だよ。
それにしても、こんだけ長くいて、
誰もAの存在に気付かねえとは…。
お前、すごいな」
A「気を付けていますから」
姉様から洗濯物が入った桶を受け取り、
姉様と沖田さんを見送った。
そのまま私は皆さんにお辞儀をして干場へと向かう。
伊東さん…。
あなたは新選組を掻きまわすおつもりなんですか…？
私や姉様の大切な人たちを、
引き離すおつもりなんですか…？
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斎藤ようこちゃん(プロフ) - 涙が…溢れて止まりません。 (2020年5月24日 15時) (
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作者名：まほろ | 作成日時：2019年9月12日 14時
