６９：逃した理由 ページ17
部屋に案内されると、
そこには既に膳が用意されていて、
皆さんは座って私たちを待っていた。
菊月「皆はん、おばんどすえ。
よぉおいでにならはりました。
旦はんたちのお相手をさせて頂きます。君菊どす」
あ、菊…、
君菊さんだ。
このお座敷の担当になったんだ。
以前、菊月さんに言われた事を思い出した。
何処かで出会っても、
知らない振りをして欲しいと。
それはお千様の為でもあるのだと言ってたっけ。
藤堂「やっぱ高い酒は違うなぁ！
喉がキューッとするよ、キューッと」
永倉「平助、お前さっきから飯も食わずに
飲んでばっかじゃねえか。酔っぱらうぞ」
永倉さん。
平助君は既に酔っています。
どう見ても顔が赤くなっていますし、
上機嫌すぎます。
そんな突っ込みを心の中でしながら、
目の前の料理を突いていた。
永倉「千鶴ちゃん、Aちゃん！
お前らは飲んでねえな！酔っぱらえねえぞ！」
千鶴「あぁ、私、お酒は飲めないので」
A「飲めないわけではないですが、
強くないので」
永倉「飲めねえわけじゃないなら飲もうぜ！
こんな酒、飲む機会なかなかねえぞ」
そう、飲めないわけじゃない。
あまり好きじゃないんだ。
でもこの席で"好きじゃない"と言うのは
空気を悪くする気がして言えなかった。
すると、沖田さんが徳利を持って隣へ来たのだ。
沖田「一杯だけ飲んであげて。
新八さん、煩いから」
A「は、はぁ…。
じゃあ、一杯だけ…」
永倉「千鶴ちゃんは料理を鱈腹食っとけよ！」
沖田さんは私にお猪口を渡し、
そのお猪口に注ぎだした。
こ、こんなに…！？
零れそうになるほどの量を注がれ、
零れないように口を付ける。
喉を通るお酒が
焼けるのではないかと思うほど強い物で嫌悪を抱く。
これ…、これが好きじゃないんだ…っ！
永倉「なあ左之、どうして逃がしちまったんだ？
相手が８人くらいなら、
何とかできねえ数じゃなかったろ？」
藤堂「ああ、俺もそれが不思議だったんだ。
一旦捕まえた奴もいたらしいじゃん」
それは私も不思議だったんだ。
原田さんたちなら捕まえられたはずだもん。
原田「A、お前あの晩、
何処かに出掛けなかったか？」
A「へ？いいえ、何処にも…」
原田「本当だな…？」
A「はい…。
私一人では辿り着けません」
千鶴「Aは一人で出て行っちゃうと、
屯所にすら帰れないもんね」
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斎藤ようこちゃん(プロフ) - 涙が…溢れて止まりません。 (2020年5月24日 15時) (
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作者名：まほろ | 作成日時：2019年9月12日 14時
