【薄桜鬼】純血を巡る者３ (ページ47)

今日:17 hit、昨日:19 hit、合計:99,492 hit

＊＊＊＊ページ47

土方「お前は本当にそれでいいのか？」

A「沖田さんには生きて欲しい。
このまま病気で伏せるような事になれば、
沖田さんは悔やまれてしまいます」

土方「だが、その変若水は
お前にとって大事なもんだろう。それを総司にって」

A「変若水は余分に作ってあります。
大丈夫です…」

土方「てめえを犠牲にすんなって言ってんだよ！」

A「では！土方さんはこのまま、
沖田さんが病気で苦しむ姿を見たいんですか？！」

土方「見たいわけねえだろ！！」

悲しい怒声。
土方さんだって葛藤してるんだ…。

沖田さんに生きて欲しい。
でも変若水は飲んで欲しくない。

それは、私だって同じだよ…。

我慢していた物が頬を伝って流れ出る。

A「私は、わ、わたしは…っ、
沖田さんに生きて欲しいです！
それが…っ、それがどんな方法であって！
私は…、沖田さんに生きて欲しい…っ」

流れ出た物を止める事は容易ではなかった。
気付けば嗚咽が漏れ、止まる事を知らない。

その時、大きくて優しい腕と体に、
私の体は包まれた。

A「生きて、欲しい…っ、
でも、人でいて欲しい…っ。
私、は…っ、私の心を…っ、
どうすれば、鬼にできますか…っ」

土方「お前は、お前でいいんだよ…」

土方さんの優しい言葉に、
涙が土方さんの着物を湿らせていく。

しばらく泣き続ければ涙も嗚咽も止まった。
土方さんの胸をそっと押し返せば、
包んでいた腕は緩やかに話される。

A「沖田さんの決断に任せましょう。
私は、沖田さんの決断に従います」

土方「あいつは飲む決断を下すだろう。
お前にとっちゃ辛い事になるぞ？」

A「大丈夫です。
これ以上身近な人の死を、
悔いの残る死を見たくありません」

泣き腫らした目を細め、
今出来る精一杯の笑顔を向けた。

ごめんなさい。
今の私に出来る強がりは、これぐらいだから…。

だから、
そんな苦しい顔をしないでください…。

土方「仕方ねえな。総司の答えを待つか」

A「はい。
お見苦しい所をお見せして申し訳ありませんでした」

土方「気にすんじゃねえよ」

土方さんに深く頭を下げて部屋を出る。
沖田さんの答えはきっと、もう決まってる…。

夕刻までの間、
沖田さんの決断に従うという気持ちを
強く持つよう、自分に言い聞かせた。