６０：宣告された命 ページ43
綱道さんの事について
兄様から聞いてから数日後。
大広間の方から賑やかな声が聞こえてくる。
今日は隊士さんたちの健康診断の日だ。
だけど私は一人、自室前の縁側に座って空を眺めていた。
そんな視界に入ったのは…。
あれ？姉様…。
あんなに急いで何処へ行くんだろう？
何かあったのかな？
姉様が血相を変えて大広間に向かって
駆けて行く姿を見ても
私は追う事が出来ない。
A「こういう時、私って非力だな…」
独り言は空気の中へ消えていく。
何もお手伝いする事も出来ず、
空を眺める事しかできないなんて…。
またしばらく空を眺めていたのだけれど、
今度はトボトボと肩を落として歩く
姉様の姿が見えた。
周りを見回しても誰もいない。
それを確認して駆け出した。
A「姉様、どうしたの？」
千鶴「……A」
姉様が駆けだして行ったのは、
健康診断をしに来ているお医者様が
姉様が京へ来た時に訪ねようとしていた
松本良順先生だと聞いたかららしかった。
その方に養父である綱道さんについて
聞きに行ったのだけれど、
良い返事は貰えなかったみたい…。
姉様の行動さん探しに進展はなかったようだけど、
姉様が肩を落としているのは
それだけではないようだった。
千鶴「沖田さんの事なんだけど…」
A「沖田さん？」
千鶴「どうやら、労咳らしくて…」
A「っ……」
労咳。
所謂"死病"と呼ばれる病。
それに沖田さんが侵されているらしい…。
ずっと気になっていたあの咳。
やっぱり、そうだったんだ…。
薄々は気づいていた。
だけど、そうじゃないって信じたかったから…。
ううん、それを知るのが怖かったから見なかった…。
千鶴「ただ療養するしか手立てがないって…。
沖田さん、どうなっちゃうんだろう…」
人気のない所に松本先生が沖田さんを呼び出し、
宣告する場面に姉様は隠れて聴いていたが、
労咳という言葉を聞いて
逃げ出してしまったらしい。
あの提案を出すしかないんだろうか…？
このまま放っておけば、沖田さんの命は長くない。
進行具合にもよるけど、
下手をすれば来年までもたないかもしれない…。
でも、私の話を沖田さんが受け入れるのだろうか…？
A「ずっと沖田さんの咳が気になってたんだ。
やっぱり労咳か…。
確かに死病と呼ばれている病気だけど…。
それ、治せるんだ…。
でも沖田さんは、それを受け入れるのかな…？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 81人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
斎藤ようこちゃん(プロフ) - 涙が溢れて。 (2020年5月23日 22時) (
レス) id: e53507092f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まほろ | 作成日時：2019年9月9日 14時
