【薄桜鬼】純血を巡る者３ (ページ4)

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４３：開かれた瞳ページ4

どれほど意識を手放していたのだろう？
かすかにだけれど匂いがする。

血の匂い…、ではないな。
でも嗅いだ事がある…。すごく、いい匂い…。

重たい瞼をゆっくりと開く。

お腹が、重い…。

傷は治っているはず。
それを確認したし、確認できたから髪も入れた。

なのにお腹が重いってどういう事だろう…？

動かない体の代わりに目を動かして腹部を見た。

A「っ…！！？」

だ、誰？！
手！手が乗ってるんですけど！！

言い知れぬ恐怖が襲う。
それでも大声を出せるような体力も気力もなく、
冷や汗を掻きながら、その手の主を確かめようと
視線をずらしていった。

A「……さっ！！？」

顎が痛い。
掠れた声で一文字だけ声を出した。

その手の主は斎藤さん。
私の隣で長い前髪を垂らして眠っている。

何故、斎藤さんが私の部屋に？
しかも隣で寝てるって何事？！

回らない頭で思考を巡らせる。

私は部屋で変若水を作っていた。
その部屋の隣は斎藤さんの部屋…。

もしかして、見られてた…？

あんな醜い姿、見せたくなかったんだけどな…。

手を動かそうと思えば辛うじて動く。
右手を必死に動かして布団から出し、斎藤さんの髪に触れた。

A「ご、めんな、さい…」

もし見ていたのなら、
あんな姿を見せてしまってごめんなさい。

言いたくても上手く言えない自分の体がもどかしい。

綺麗な髪。
サラッと髪が私の指から落ちる時に漂う匂い。

あの匂いは斎藤さんの匂いだったのか…。

これ以上動かす事も辛く、声を出すのもきつい。
もう一度布団へ手を戻そうとした時だった。

斎藤「何故謝る」

A「っ…！！」

閉じていた目が急に開き、それにかなり驚いた。
だが声を出す事も体を動かす事も出来ず、
心臓だけが飛び跳ねる。

A「お、こして、しまい…」

斎藤「あんた、声が…」

A「うまく、だせ、ません…」

今出来る笑顔を作ると、斎藤さんは起き上がった。

ああ、体が動くって羨ましいな…。
今の私じゃ自分で起き上がる事すら出来ないよ。

A「も、しかし、て…」

斎藤「話は後で聞く。今はゆっくり休むといい」

声を出すのも辛いって分かってくれたのかな？
斎藤さんは優しいから、きっとそう思ってくれたんだろうな。

もう一度笑い、目を閉じて意識を手放した。