【薄桜鬼】純血を巡る者３ (ページ27)

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５４：兄様ページ27

「兄様」と声を掛けると、
兄様は諦めたように眉を下げて
困ったような笑顔を向けてきた。

南雲「A。よく俺だって分かったね」

A「分かるよ、兄様だもん…」

南雲「千鶴は全然気付いてくれなかったけどね」

A「姉様も疑ってた。
でも姓が違う事と女の人だったから
確信が持てなかったみたいだけど」

南雲「そっか。ここでは場所が悪い。移動しよっか」

兄様は私の手を引いて歩き出す。

父様。兄様に会う事が出来ました。
でも私の知ってる兄様の姿ではありませんでしたよ…。

藤堂「A…」

A「近くにいてくだされば大丈夫ですから」

笑ってそう言えば、平助君は
「分かった」と言って、少しだけ離れてついて来てくれる。

何処まで行くのかと思ったけれど、
黙って兄様について歩いた。

南雲「ここまで来れば大丈夫かな？」

A「兄様、何故女の人の格好を？」

南雲「千鶴を近くで見守るなら、この方が都合がいいからさ」

A「姉様にすっごく似てる…」

南雲「千鶴に？Aに似せたんだけどな」

ハハッと笑う兄様は、私が知ってる兄様の笑顔だった。
変わらない笑顔があるっていうのは、
どんな人でも安心するな…。

藤堂「千鶴だろうがAだろうが、同じ顔じゃん」

南雲「あなたは分かっていませんね。
千鶴は少し幼い感じですが、Aは少し大人びていますよ」

A「そうなの？」

南雲「Aは小さい頃からの生活環境のせいだね」

私ですら姉様と顔は同じだと思っていたのに、
兄様から見る私たち姉妹は違うようだ。

A「兄様…。父様と、母様が…」

南雲「父様と母様がどうしたんだ？」

A「亡くなったの…。
人に襲撃されて、村も無くなっちゃって…」

南雲「な、に…っ？！」

兄様は何も知らないようだった…。