【薄桜鬼】純血を巡る者３ (ページ3)

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４２：赤い布団＜雪村千鶴＞ページ3

Aが変若水を作った翌朝。
昨日土方さんに言われた通り、
水を持ってAの部屋を訪れた。

千鶴「入るよ」

きっと眠ってる。
分かってはいたけど、一応声だけは掛けておかないとね。

障子を開ければ血塗れの部屋。
Aはいない。

千鶴「あ、そっか…。
斎藤さんの部屋で寝てるんだった」

Aの部屋に行くという思いを抱いていたから、
いつも通りAの部屋を訪れてしまった。

癖というものは怖いな…。
まあ、どうせ隣の部屋なんだし、
見ずは後で持って行こうかな。

まずはこの部屋をどうにかしなければ。

Aの部屋に入り、文机の上に水を置いて振り返る。
そこには開け放たれたままの襖。

千鶴「あらま…」

そこから見えるのは斎藤さんの部屋。

綺麗に寝かされたAと、
まるでAを抱きしめるように眠る斎藤さんの姿があった。

畳の上で、さぞかし寒かったでしょうに…。

それにしてもAに寄り添って眠ってらっしゃる。
斎藤さんもAが心配だったのかな？

Aには斎藤さんが付いていてくださる。
私が心配しなくてもいいのかな？

あちらはとりあえず放置して、Aの部屋を片付け始める。
なるべく斎藤さんを起こさないように、静かに…。

畳みは私ではどうする事も出来ないし、
後で土方さんを呼んでこよう。

Aの血で汚れた布団を畳んで廊下へ出す。
そして文机に置いていた水を手に持つと、
襖の敷居を超えた所に置いて部屋を出た。

廊下に置いていた汚れた布団を抱えて庭に出た時だった。

土方「それは燃やして処分だな」

千鶴「その方が良さそうですね」

布団を抱えた私を見かけたからなのか、
土方さんもAの様子を見に来たのかは分からないけど、
布団を燃やすように指示をしてきた。

言われた通り庭に出て、
布団に火を付けて燃え終わるのを待つ。

それを同じように土方さんも私の隣に立って、
燃える布団を見つめていた。

千鶴「斎藤さんがAに寄り添って寝てくれていました」

土方「斎藤が？」

千鶴「心配だったんでしょうか？」

土方「……そうなんだろうな」

目線を土方さんへ向ければ、
土方さんは口角を上げて静かに笑っている。

何を思っていらっしゃるのかは私には分からない。

この寒空の下で赤に染まった布団は、
焚火のように私たちを暖めてくれていた。