【薄桜鬼】純血を巡る者３ (ページ14)

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４７：まさかの出来事＜斎藤一＞ページ14

本当はそんなつもりなど無かった。

しかし、Aが紡ぐ言葉に苛ついていた。
これが一番しっくり来るだろう。

灯油の火を吹き消せば、
新月の今日は室内ですら闇に包まれる。

Aが寝ている布団に手を伸ばして入れば、
人の体温でかなり暖かい。

さすがに一人用。
二人で寝るというのは、やはり狭いな。

Aはこちらに背を向けて寝転んでいる。
手の置き場に困ったという事もあるが、
何故か"触れたい"と思ってしまった。

A「っ…！」

Aの腰に右手を置けば、
警戒したのかAの体が強張ったのが分かった。

斎藤「何もせぬ」

俺の言葉を信用したのか、安心したのか…。

Aの体の強張りは緩められ、
外に出ていたAの手が布団の中へと入ってくる。

それがちょうど
俺の手の近くに来たものだから、思わず握った。

斎藤「冷たいな…」

手を握って少しすると寝息が聞こえ、
Aは寝てしまったようだ。

先ほどの会話が脳裏で繰り返される。
どう考えてもAは卑下しすぎている。

何が自分がいなければ、だ。

あんたがいなければ、雪村はどうなるのだ。
あんたがいなければ、山南さんはどうなっていたのだ。

あんたがいなければ、
あんたの笑顔がなければ救われない人だっているではないか。

それに人が望めば、その人の幸せになるのであれば、
自分は喜んで命を捧げると…。

俺たちとあんたとでは身の置いている立場が違う。

そんな簡単に命を落としていい存在ではないのだと、
何故分からないのだ…。

考えれば考える程に苛立ちが募る。

それに伴ってAの手を握る力が強くなっていった。

こんな細く小さな手に、
あんたはどれほど重いものを持っているのだ？

こんな小さな背中に、
あんたはどれほど重いものを背負っているのだ？