【薄桜鬼】純血を巡る者３ (ページ11)

今日:25 hit、昨日:19 hit、合計:99,500 hit

＊＊＊＊ページ11

それに、できるならもう
変若水は作りたくない！

あの痛みを好んで味わいたいなど、誰が思うだろうか。

斎藤「あんたは…、自分を犠牲にしすぎだ」

A「そうでしょうか？」

自分を犠牲に、か…。

A「斎藤さんは、自分などいない方が良かった。
って、思った事はありますか？」

斎藤「……？」

A「突然すぎましたね」

斎藤「いや…。あんたは思った事があるのか？」

A「私はいつも思っていますよ。
私がいなければ、姉様は引け目を感じる必要はなかったのに。
私がいなければ、姉様が村を出て行かずに済んだのに。
私がいなければ、父様と母様は死なずに済んだのに。
私がいなければ、姉様は鬼と知らずに暮らす事が出来たのに、と…」

ちゃんと笑えているだろうか？
それに、何で私はこんな話を斎藤さんにしているんだろう？

しかし、走り出した言葉は止まる事はない。

A「ですが実際に私は存在していて、
こうやって斎藤さんともお話をしています。
それなら自分に出来る事は全てやりたい。
それが頼まれた事ではなくても、
もしそれが原因で喧嘩をしてしまったとしても…。
それえも全てをやりたいんです」

斎藤「極論だが、もし雪村があんたの死を望んでいる。
と言ったら、あんたはどうするんだ？」

本当に極論だな。

姉様が私に…。
そんなの考える必要なんてない。

A「姉様がそれを望み、
それが姉様の幸せになるのであれば、私は喜んで死にます」

大切な人たちが幸せになる為なら、
私は喜んで命を捧げるよ。

それに対しての迷いなんてない。

斎藤「雪村がそんな事を言うはずはないがな」

A「私もそう思います」

思うんじゃない。
思いたいんだ。

姉様にそんな事を言われたら、
死んでも死にきれないだろうしね。

喋りすぎたのか少し喉が渇いたな…。
お水、飲みに行けるかな？

立ち上がってみようと動いてみれば、
それを斎藤さんに止められた。

斎藤「三度目だ」

A「……お水が飲みたいなって思ったんですが」

斎藤「待っていろ」

そう言うと、斎藤さんは部屋から出て行った。
廊下を静かに歩く足音が消え、完全な静寂に包まれる。

A「初めて思っていた事、言えた…」

今まで抱えていたものを、初めて口に出して言った。
誰にも言うつもりなんてなかったのに…。

何度考えても見いだせない存在価値。
何度考えても"いらない"という答えしか出てこない。