＊＊＊＊ ページ47
土方「こいつの方向音痴は
どうにかならねえのか？」
千鶴「な、何かあったんですか？」
アハハッとAは苦笑いを浮かべ、
土方さんは困ったように頭を掻いていた。
土方「ちょっと目を離しただけでいなくなっちまう。
何でかと思えば道を間違えただの、
人に紛れて分からなくなっただの…。
試しに俺の前を歩かせてみたら、
明後日の方向に向かって行きやがる！」
千鶴「Aの方向音痴は筋金入りですからね」
土方「ったく…。一人で出掛けさせる事はできねえな」
A「お手数をお掛けしました…」
よくよく見れば二人は手を繋いでいた。
きっとすぐにいなくなってしまうAを
土方さんが見失わない為だろう。
あれだけ不安だった心が、どんどん平穏へと戻っていく。
普段と変わらないAの姿が、
私を落ち着けてくれたんだ。
A「ごめんね、姉様。私の分まで大変でしょ？」
千鶴「そんな事ないよ。
Aの為だもん。私だって頑張るよ」
A「ありがとう」
いつもと変わらないAの笑顔。
幼い頃から救われてきた笑顔だ。
A「土方さん。使ってない桶とかありませんか？」
土方「あ？そんなもん何に使うんだ？」
A「変若水を作るのに綺麗な桶では汚れてしまうので、
使ってないか、捨てようと思っている桶が欲しいんです」
土方「それなら井戸の所にあったんじゃねえか？
後で部屋まで持ってってやるよ」
A「ありがとうございます」
そこでやっとAと土方さんの手が離れ、
Aは土方さんに頭を下げると中へと入って行った。
Aの姿は変わらない。
でも、内心はどれだけの恐怖で支配されているんだろう…。
そう思ったら、私の口は勝手に動いていた。
千鶴「土方さん、お願いがあります」
土方「何だ？」
千鶴「今夜、変若水を作る場所に行こうと思います。
その時に一緒に来てもらえませんか？」
土方「は？Aには部屋に入るなと…」
千鶴「部屋には入りません。外から見守るだけです。
お願いします…。
私一人で見る勇気が、ありません…」
できるなら同じ部屋にいてあげたい。
でもきっと、私がそこにいてはAの邪魔をしてしまう。
それでもやっぱりAの近くにはいてあげたい。
何かあった時に、すぐ駆けつけてあげたいから…。
土方さんは少し考えていたけれど
「分かった」と了承してくれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 107人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
斎藤ようこちゃん(プロフ) - き。気になります。 (2020年5月23日 9時) (
レス) id: e53507092f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まほろ | 作成日時：2019年8月31日 3時
