３６：大晦日＜斎藤一＞ ページ38
雪村が土方さんの隣へ行き、
一人で歩いているAを見れば
何だか寒そうに見えた。
Aも羽織を着ているし、それでも寒いのならばと
自分が巻いていた物を巻いてやっただけ…。
だがAは最初は遠慮していたものの、
その後は嬉しそうにそれを受け入れている。
時折それで鼻まで覆っては笑う。
それは可笑しくて笑っているのではなく、
嬉しくて笑っているというのは俺でも見て分かった。
そんなにも嬉しいものか？
それは男の物だという認識はないのだろうか…？
しばらくAと並んで歩いていたのだが、
たまに立ち止まっては追いかけてくるという行動を繰り返す。
ただでさえ方向音痴なのに、
これではいつはぐれてしまってもおかしくはない。
仕方なくAが立ち止まった時に
俺も立ち止まって待つことにした。
すると、俺が立ち止まっているとは思っていなかったのか、
また走り出そうとしてぶつかってきたのだ。
A「す、すみません！」
斎藤「はぐれてしまうぞ」
A「ご、ごめんなさい…」
苦笑いのような笑みを浮かべ、
ぶつけた額をさすりながら歩き出そうとしたところを
手を掴んで引き止めた。
それに驚いたのか、
勢いよく振り返ったAの瞳は大きく見開かれている。
斎藤「これならはぐれぬだろう」
A「……ありがとう、ございます」
あれだけ大きく見開かれていた瞳を、
今度は少し伏せて微笑む。
コロコロと、よく表情が変わる娘だ。
それを見るのが楽しいと思ってしまう
俺も俺なのだろうがな。
Aの手を引いて歩けば、またも立ち止まる。
前を歩いていた土方さんと雪村の姿は
いつの間にか見えなくなっていた。
目的地は同じだ。
特段気にする必要もないか…。
A「あれ？姉様たちがいませんね…」
斎藤「あんたがよく立ち止まるからだろう」
A「す、すみません…」
斎藤「目的の場所は同じだ。
そこへ行けば必ず会えるから心配するな」
A「そう、ですね」
またAの手を引いて歩いているのだが、
これは傍からはどう見えているのだろうか？
Aの姿は断層であるから、
仲のいい兄弟といった所だろうか。
いつか女物の着物を着せて歩かせてやれるだろうか…？
って、俺は何を思っているのだ？
Aは特に気にしている様子はないのだし、
俺も気にする必要はないはずだろう…？
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斎藤ようこちゃん(プロフ) - き。気になります。 (2020年5月23日 9時) (
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作者名：まほろ | 作成日時：2019年8月31日 3時
