【薄桜鬼】純血を巡る者２ (ページ29)

今日:30 hit、昨日:31 hit、合計:119,231 hit

＊＊＊＊ページ29

受け取った桶の水も替え、
それを持って
持ち場へ戻ろうとしていた時。

土方「総司！待ちやがれ！」

少し遠くの方から土方さんの怒声が聞こえ、
少し足を止める。

すると沖田さんがニコニコと
楽しそうに走っている後ろから、
沖田さんとは正反対の
眉間に皺を寄せて眉尻を吊り上げた土方さんが
追いかけるように走っている。

A「本当、仲がいいんだから」

……仲が良いって言えるよね？
喧嘩する程なんとやらだもん。

止めていた足を動かして、
今度こそ姉様が待っているはずの
持ち場へと戻った。

千鶴「遅かったね」

A「お水、二つ替えたからね」

千鶴「誰かに頼まれたの？」

A「ううん。
斎藤さんがお水を替えようとしてたから、
私が替えた桶を押し付けて渡しちゃった」

千鶴「それ、押し付けたって言わないでしょ」

クスクスと姉様が笑うから、
私も自然と笑顔になっちゃう。

姉様と他愛ない話をしながら掃除をすれば、
自然と作業効率が上がって早く終わって行く。

こんな時間を過ごせるようになるなんて
本当に夢みたいだ…。

毎日が楽しくて仕方ないって
思える日が来るなんて思ってもみなかったよ。

山南「A君、
こちらをお願いしたいのですが、
よろしいでしょうか？」

最後の柱を拭いていると、
山南さんが手ぬぐいに何かを包んで持ってきた。

中身、何だろう？

A「それは何ですか？」

山南「筆です。用途ごとに筆を変えているので、
どうしても増えてしまって」

A「山南さんらしいですね」

山南「できれば、この筆洗いを
引き受けて頂きたいのですが…。
私も他にまだまだ掃除したい場所がありますので」

A「いいですよ。引き受けますね」

手ぬぐいに包まれた筆を受け取ると、
山南さんは嬉しそうに目を細めて

「ありがとうございます」

と一言告げてから部屋へと戻って行った。

用途ごとに分けるってすごいな。

受け取った筆たちを一旦柱の近くに置き、
柱を総司してから筆と雑巾を持って
姉様の所へ。

A「姉様。山南さんに頼まれた物を
洗ってくるから、後を頼んでもいい？」

千鶴「いいよ。もう終わるから行っておいで」

雑巾を桶の淵に引っ掛けて、
山南さんから受け取った筆を持って
井戸へと向かった。

土方「総司！いい加減にしやがれ！」

その途中で、まだ土方さんと沖田さんは
追いかけっこをしているようで、
また土方さんの怒声が聞こえてきた。