【薄桜鬼】純血を巡る者２ (ページ19)

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【古い父からの文】ページ19

Aへ

直接言う事は憚(はばか)られるため、文にしたためる事にしたよ。

まずAに謝らなければいけない。
Aには雪村綱道は人の世に暮らす分家と伝えたが、そんな分家はないんだ。
雪村綱道は確かに分家だが、本家からはかなり遠い分家だ。
それでも分家は分家。嘘を付いてしまった事を申し訳なく思う。

そして、これは忠告だ。
雪村綱道には気を付けろ。

千鶴を預ける候補に綱道の名前は無かったんだが、千鶴を出すと決めた時に突如現れ、自分が預かると言い張って頑として譲らなかった。
何を考えているのかは分からんが、あの時の綱道の目がどうにも頭から離れない。
それでもこの村を出られるならと、千鶴を預けたまでだ。

私たちの尻ぬぐいのような事をさせてしまうが、どうか、いつか千鶴を見つけ出して綱道から離してやってくれ。
そして姉妹仲良く暮らして欲しい。

隠し部屋の棚に小さな箱がある。その中身は千鶴の変若水だ。
千鶴が喪失の儀式をした後からずっと大切に保管しておいた。
もし千鶴に会えたら、それを使って記憶を戻してあげておくれ。

そして、もう一つ隠していた事がある。

薫は生きている。
薫には千鶴を見守るという任務を与えて、人知れず村を出した。
千鶴に会う事が出来れば薫に会う事も出来るだろう。

ずっと黙っていて申し訳なかった。