Queue de Lapin

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焼き上がったパンを次々と

販売ブースの棚に並べると

店内には

甘いようなバターの香りが広がってく


私はドアに掛かるcloseの札をひっくり返す




出勤前のOLさん

作業着の男性

上品なおばあちゃん



ゆっくり選ぶ人も急いでる人も

パンを見つめる目は優しくて


なんだかそれが嬉しい



店の中にはイートインスペースがあって


午後になれば若いママさんたちが
お喋りに夢中



「A〜、りんごのデニッシュ
焼き上がり！」



厨房から元気な声で
焼き上がりを教えてくれるホソク


手を上げてそれに応える





夕方になって




カラ…ン



「いらっしゃいませ」

入口に向かって声を掛けると
制服姿の男の子




『…あ、あの

テーブルの席、いいですか？』


「はい、どうぞ」


チェイサーを出して離れる



キョロキョロと店内を見回すと


カタン

トレイとトングを手に
並ぶパンの前に立つ

彼の口元がわずかに上がる


見たことない子だな



男子高校生がひとりで来るのは
まあ、珍しくて

なんとなく目が行っちゃう






『…あの

これ、甘いですか？』


彼の指の先には
りんごのデニッシュ


「はい、りんごを煮て作ったペーストと
角切りの果肉が入ってます

バターをたくさん使ったデニッシュで
ほんのり甘酸っぱい風味です」



真剣な瞳で説明を聞いて
ふーん、とひとつ頷くと

『…ありがとうございます』



ひとつ、トレイにのせる


クロワッサンもひとつ



チョコデニッシュもひとつ…



デニッシュばっかり 笑



レジでココアも注文頂いて



…甘いものだらけだな




テーブルにココアを運んで行くと


英語の参考書を取り出して
ノートを開いた彼が顔を上げる




『あの、ここ何時までですか？』



「８時までやってます」



『…ちょっと長く居ても大丈夫ですか？』




「はい、ごゆっくりどうぞ」



あ、あの参考書
私も使ってたやつと同じだ


受験生、なのかな





『あち…』


彼はココアに口を付けて
小さく声を上げた



ふふ

なんだか、かわいいな









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