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｢家、追い出された？｣
｢なに？聞いたって仕方ないよ。｣
｢旅の恥はかき捨てじゃん、聞いてやるよ。
誰かに話すとラクになるかもよ｣
｢私ね、日本で育ったんだわ｣
たいした面白い話でもないんだけどなって言いながら、
ぽつりぽつりと話し出す。
｢元々、母親が在日韓国人ってやつで。
日本人の男との間に出来ちゃったのが、私。｣
どおりで、訛りがあるんだな。
｢でも、父親には家庭があって。いわゆる不倫相手の子供ってやつ。
ウチの母親も食っていかなきゃいけない訳じゃん。
だから、私を育てられなくて。
父方の祖母にどうにかしてくださいって私を押しつけて。
そのばあちゃんが、まぁいい人だったから、
私を親戚の子どもだって言って引き取ってくれたんだ。
でも、そのばあちゃんも小学5年の時に死んじゃって。
私の事が気がかりだったみたいでさ、
死ぬ前に、母親に連絡してくれていて、葬式の日に母親が現れて引き取ってくれた。
そして、母と母の友人と女3人暮らしが始まった。
今まで、日本人だったのが、急に日本にいながらも、口にする物も話す言葉も韓国のものになって、
とまどったけど、それは順応できた。
だけど、母親とその友人の男関係が派手で……イヤな毎日だった。
父親の嫁っていうのも、私の存在を疑っていたし、
父親の所になんて、絶対行けないじゃん。
在日韓国人だなんて、差別もうけつつ高校行きながら、
バイトして、そいつらから逃げたいって、
高校卒業して韓国に来たわけよ。
おばあちゃんってのは、優しいイメージがあったし、
母親の祖母をたよって。
母親から元気だと聞いてたから。
そしたら、離れてる私の母には言えないけど、実は重い病気で入院してたんだよ。
大邱って街なんだけど、兄さん知ってる？
そこに住み込みで働きながら1年程暮らしたけど、
気の狂った女が夫と私の関係を疑って、色々あって辞めてきた。
それで、なんとなくさ、ソウルとやらを見てやろうかなって、出てきたわけ。
ま、結局のところ、
私の居場所なんてさ、日本にも韓国にもない訳よ。
日本にいれば、韓国人って言われ、
韓国に来たら、日本人めって言われるしさㅋㅋㅋ
めんどくさい。｣
意外にも喋りだしたら、よくもまぁ、他人事のようにベラベラと話す。
しまいには、
もう、どっか違う国とか、行っちゃおうかな〜
なんて、ヘラヘラ笑ってる。
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作者名：みんと
| 作成日時：2022年9月9日 17時
