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嬉しそうにキッチンに行く。
コイツも、知らない家、知らない街での数日、1人で寂しかったのかな。
それで、このピアノに話しかけたのか……笑
｢このピアノとも仲良くしな。勝手にいつでも触っていいから。
あとさ、お前もまだ食ってねぇなら、一緒に横で食え｣
美味い。
豆腐にもしっかり味がしみていて、半熟の卵もちょうどいい。
｢これ、なんていう料理？｣
｢すき煮だよ。日本のすき焼き知ってる？ま、あれの甥っ子みたいなもんかな？｣
説明が雑だろ。
コイツは、教育、しつけこそ、ちゃんとされてないけど、苦労してきた分、料理や自分の身の回りの整理とかはきちんとやるようだ。
久しぶりに、ゆっくり美味い飯を食った気分だ。
｢明日の朝の分、まだあるから、ここにうどんを入れて食えば美味いよ、にいさん。
あ〜久しぶりに食ったなぁ、すき煮。
自分でいうのも悪いけど、やっぱ美味いよなぁ〜｣
ばあちゃん思い出すわ〜なんて、うっとりしながら食ってやがる。幸せそうに見えるけどな笑
ずっとこんな顔をコイツにさせてやりたいと思うオレは、やはりお人好しなんだろうか。
食後も、きちんと後片付けをしている。
作成中のメロディを流しながら、ソファで寝転んでいると、Aがたくさんのミカンを持ってきた。
散歩していたら、歳とったばあさんに、どうぞ、買ってくださいと懇願され、断りきれずに買ったという。
｢そのばあちゃんの着古したスボンや、しわしわの手を見てるとさ、なんだか可哀想になっちゃって｣
白い肌が黄色くなる位、食いなよって渡してくるから、
2人でミカンを食う深夜。
1人の時間を邪魔されるのは嫌だったハズのオレが、自分家で知らない女とミカンを食う深夜。
最近のオレ、狂いだしてんな……
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作者名：みんと
| 作成日時：2022年9月9日 17時
