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翌朝、おにいさんは、軽く朝食をとり、出ていった。
いよいよ、今日から本格的に家政婦の仕事を始めた。
朝食のあと、掃除と洗濯をしていると、
おにいさんが買ってくれたベッドなどが届き、
1日がかりで片付けた。
夕飯もなんとか完成させた頃、おにいさんが帰ってきた。
｢お風呂も沸いてるし、ご飯も出来てるけど？｣
｢飯｣
ほんとに、無口な雇い人だ。
着替えに行ってる間に、テーブルにご飯を並べてると、
｢おぉー、家政婦を雇うってのもいいもんだな。｣って。
不機嫌そうだったのは腹減ってただけ？
｢お前は？もう食った？｣
｢まだ｣
さすがに一緒に食べるのはよくないと思ってる。
それなのに、優しい事を言うおにいさん。
｢じゃ、一緒に食えばいいじゃん｣
お言葉に甘えて、同じテーブルで食べさせてもらうけど、
おにいさんはiPadの細かい文字を追っている。
一緒に食う意味ないじゃん。つまんない。
黙々と食べる私が最後の一口を口に入れた時、
やっとおにいさんが、話しかけてきた。
｢今日、なにやってた？｣
私は、雇い主に今日の仕事を報告した。
｢お、部屋、自分1人で出来たんだ。エラいじゃん｣
当たり前だろ、なんて言わない。
お皿を下げるために立ち上がると、｢飯、美味かった｣って。
嬉しいこと言えんじゃん。
｢お前、料理出来んだ｣
｢ばあちゃんが生きてた頃……
小さい頃から食堂やってたばあちゃんの手伝いしてたし、
母親と住むようになってからは、作らされてたから……作らされてたってよりも、
作ってくんないから、生きるために作ってたってのが正解かな。
中学から、母親の知り合いの韓国料理屋で手伝いのバイトもしてた……そこで夜ご飯食えるから。｣
｢じゃ、日本食も作れんの？｣
｢そりゃ、そーでしょ｣
｢言ってくれんじゃん。
でもさ、おまえは苦労して生きてきて、大変だったかもしれねぇけど、
そこらの料理ひとつ作れねぇような着飾ったお嬢ちゃんよりも、得意なものがあって凄いじゃん。
じゃ、また作ってよ｣
そう言って、手をあげて、自分の部屋に消えてった……
ほんとだ、食ったもの、下げねぇ野郎だな。
だけど、
自己肯定感を上手にあげてくる男だな。
また美味い日本食作ってやろうかな。
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作者名：みんと
| 作成日時：2022年9月9日 17時
