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｢コーヒー欲しいんだけど｣
そう言われても、どこにコーヒーのスティックがあるのか分からない。
探してると、｢目の前あんじゃん｣って、小馬鹿にしたように指をさす。
ん？なに？どれ？
｢もしかして、分からねぇの？｣
素直に頷くと、今日初めての柔らかい笑みを浮かべ、教えてやるよって。
家にコーヒーマシンを置く人なんて、初めてで分からないよ。
使い方を教わり、私の分まで作ってくれた。
口に入れてみると…苦っ！
こんな苦いコーヒー、初めて飲んだ。
砂糖とミルクの入ったインスタントのスティックしか飲んだ事ないもん。
顔をゆがめる私を見て、
｢お子ちゃまには苦いかな｣
またもや、笑いやがる。
でも、牛乳を入れたらマシだろって持ってきてくれ、案外優しいところもある。
また2人で黙ってコーヒーを飲む。
無口な人なんだ。
｢夕方まで時間あるから、買い物付き合ってやるわ、店とか分かんねぇだろ。
オレはあまり出歩けねぇから、ネットで買えるもんはネットで買おう｣
そういって、こっち来いって、ある部屋に通される。
キーボードやらスピーカーやら、いろんな機械が置いてある。
音楽する人なのは本当みたいだ。
｢女の部屋って何がいんの？｣
カチャカチャとベッドや布団をカートに入れていく。
たまに、どっちがい？なんて聞いてくれるけど、どれもすごい高いもの。
｢こんな高いもの要らないよ｣
そう言っても、福利厚生だよって。
一通り、ネットショッピングが終わり、
持っていない事に驚かれた携帯電話や
身の回りの物を買いに連れて行ってくれることになった。
メガネとマスクをつけて、さっきまでの小綺麗なTシャツから、少しヨレヨレのTシャツとジャージに着替えてきた。
さらにオーラなし。
自分の高級車じゃなく、タクシーに乗る。
あ、もしかして、変装してるんだろうか笑
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作者名：みんと
| 作成日時：2022年9月9日 17時
