レッド09 ページ49
「彼女ね、怖いって言ったんだ。」
月明かりを帯びて、一層輝きを増した十字架のペンダントを握りしめ、涼介くんはそう言った。
「正直に言うと、何でって思ったよ。」
端正な顔立ちをしている彼は、困っているような表情でさえも様になっていた。
「そっか…。」
どんな言葉を掛けていいのかも分からずに、私はじっと彼の様子を見ている事しかできなかった。
「俺らからしたら当たり前なんだよね。永遠を生きるっていうのが。だから人間ってちょっと羨ましいんだ。」
「……そんなことないよ。私からすると皆の方が羨ましい。」
お世辞なんかじゃない。
これはれっきとした本心。
「人間なんて堅苦しい生き物だよ。面倒だし。」
「……。」
「俺は人間の方が羨ましいと思う。時間が限られてるからこそ、ちゃんと時間を大切にしなきゃって思えるんだろうし。」
私は何も言い返せないで、そこに座っていた。
しかし思いは変わらなかった。
「私ね、ずっとここに居たいの。」
自分という存在が一体何なのか。
息苦しいあの空間で過ごす無意味な時間に帰りたくない。
初めて受けた映画の話だって、今となってはオファーを受けたときほど輝いて見えない。
「ここに居れば面倒なことで悩んだりしなくていい。」
だからね、私ずっとここに居たいんだ。
初めて出せた自分の本音。
しかしその本音を、彼はなし崩しにした。
「それは無理だよ。人間はこの世界には居られないから。」
まだまだ甘いね。
私は彼を心の中で笑った。
「そうだね。私が『人間』なら、無理だね。」
その言葉の意味を、彼は理解したようだった。
しかしその表情は何故か強張っていた。
そして何故か怒っているようで、少し悲しそう。
色んな感情が彼の中で渦巻いているのが一目で分かる。
「……怖いこと考えるの、やめてよ。」
涼介くんの声はどこか震えていた。
そうだね。
貴方にとっては過酷なことかもしれないね。
だって一度、怖い思いをしているのだから。
でもね、残念だけど私は元の世界に帰る気なんて全くないの。
どうやったらここの世界にずっといられるのだろう。
私の脳内で巡る疑問。
だけど答えは簡単に出たんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 63人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
春みかん(プロフ) - はい！！またお邪魔します(*’▽’) (2016年3月10日 22時) (
レス) id: fc4caac89c (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - 春みかんさん» ありがとうございます！大好きなんてお言葉、私にはもったいないです！更新頑張ります。またお時間がありましたらコメント欄にも遊びに来てくださいね！ (2016年3月9日 22時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
春みかん(プロフ) - この小説大好きです！！更新頑張ってください！ (2016年3月9日 22時) (レス) id: fc4caac89c (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - なる.さん» ありがとうございます！まだまだ至らない点も多いですが、最後までよろしくお願いします！ (2016年3月7日 7時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
なる.(プロフ) - この作品、すっごく面白いです、！更新頑張ってくださいさい。楽しみにしてます、！ (2016年3月7日 6時) (レス) id: 1c30441fc3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
