レッド06 ページ46
『薮くん…どうしよう。涼介、目を覚まさないの。』
不安げな彼女の表情をよそに、薮くんは大丈夫だよと冷静そのもの。
『どうしたのかな…。』
薮くんはそのまま、ぐったりとしたまま動く気配のない涼介くんの身体を起こし、日の降り注ぐ草原に寝かせた。
『血が足りないのかも。』
少し青白いその顔色。
ヴァンパイアにとっての血液不足は、人間で言うところの栄養不足。
どちらにせよ、体調はあまり良くないことが分かる。
『そんな…。』
『大丈夫だよ。血を飲めば治るから。』
『でも、どうするの？もう宛はないんでしょ？』
少女の言葉に薮くんは動作を止めた。
『……そうだね、もう宛はないね。』
今までに聞いたことのないような、少し低い声で。
『じゃあ…どうするの……？』
『…何とかするよ。山田は絶対に死なせちゃいけない。』
『うん…。』
『だけど、夜になるまで待ってほしいんだ。本当は待ってる時間も惜しいけど、俺は夜にならなきゃ動けないし。』
全身を真っ黒なローブで包んだ薮くんにとって、日光はやっぱり天敵なのだろう。
けれどここは、あのハロウィンの世界ではない。
昼が訪れるのは、あの世界ではありえないことだから。
『由緒正しい「真紅」の家系は少なくなってきてる。だから絶対に、死なせちゃ駄目だよ？』
最後に意味深な言葉を残して、また時間は流れた。
『……それって…。』
月明かりの下、満月の明かりに照らされた薄暗い室内。
外では雨が降っていて、ますます雨足を強めていた。
ベッドの上に寝かされた涼介くんを前に、少女の驚いた表情。
そして黒いローブのフードを外し、濡れた髪のままそこに佇む薮くん。
『宛は全部回ったけど、やっぱりダメだったよ。』
彼はごめん、と謝って目線を涼介くんの方に向けた。
『こうなったら、無理やりにでも奪うしかないね。』
『でも、そんなことしたら……。』
『分かってるよ。俺は永遠の「裏切り者」になる。』
少女は困ったような表情をしてうつむいた。
『……方法は、もうないの？』
『ないよ。でも馬鹿じゃないんだから分かるはず。「真紅」の血筋と俺の名誉、どっちが大事？』
『それは…。』
静かな室内に雨音がうるさいほどに聞こえた。
しかし少女が下したのはまさかの決断。
『なら私の血を捧げる。』
『無理に決まってる。ヴァンパイアに血を吸われたら、お前もヴァンパイアになる。』
それでも少女の目は揺るがなかった。
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春みかん(プロフ) - はい！！またお邪魔します(*’▽’) (2016年3月10日 22時) (
レス) id: fc4caac89c (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - 春みかんさん» ありがとうございます！大好きなんてお言葉、私にはもったいないです！更新頑張ります。またお時間がありましたらコメント欄にも遊びに来てくださいね！ (2016年3月9日 22時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
春みかん(プロフ) - この小説大好きです！！更新頑張ってください！ (2016年3月9日 22時) (レス) id: fc4caac89c (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - なる.さん» ありがとうございます！まだまだ至らない点も多いですが、最後までよろしくお願いします！ (2016年3月7日 7時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
なる.(プロフ) - この作品、すっごく面白いです、！更新頑張ってくださいさい。楽しみにしてます、！ (2016年3月7日 6時) (レス) id: 1c30441fc3 (このIDを非表示/違反報告)
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