【HSJ】光が射しても

ナイト06 ページ36

そのジャックって人は悪賢い人間だったんだ。
頭はいいんだけど、悪知恵ばかり浮かぶ人。


それを武器に悪魔を呼び寄せた。
そしてジャックは悪魔と契約を結んだ。


『死んでも地獄に落ちることがないように』って。


悪魔と契約を結んだ以上、自分が地獄に落ちる事はない。
だからどんな悪でも、彼は恐れなかった。


それから死ぬまで彼は悪を働き続けた。
けれどやっぱり天罰は下るもんなんだね。



人間は死んだあと、天国へ行くか地獄へ行くかの裁判にかけられる。
けれど彼はどちらに行くことも許されなかった。


散々悪事を働いて、天国に行けるはずなんてない。
もちろん、契約を結んでいる以上は地獄にも下れない。
死んでいる以上、生き返ってもう一度人生をやり直すこともできない。



ジャックは永遠にこの世をさまよい続けることになった。




ここまでは人間の世界でも知れ渡っていることだよね。
でもここからはモンスターたちしか知らない、永遠のハロウィンの物語。



ジャックは孤独の中、一人でさまよい続けた。
死んでからやっと気づいた。
もっと正直に生きればよかったと。
人の為になれることをすればよかったと。


だからせめてもの償いにと、彼は道を間違えた人を正しい元の道に戻すための『ランタン』になった。
誰かの道を照らすための光になればいい。


その思いを掲げ、長い年月の間ひとりで過ごしていたんだけどね。
突然ジャックに声がかかったんだ。


『一人は寂しいでしょ？』って。


それが圭人なんだよ。
圭人も元々は人間。
すごく優しい性格でさ。


一人で道を照らし続けるジャックの味方になったんだ。




それから圭人とジャックはたくさんのモンスター達と出会って、年に一度のハロウィンを作ったんだよ。
自分と同じ、モンスターがたくさん集まって夜のパーティーをする。


ジャックは孤独から解放されたんだ。


だけど、圭人はそうじゃなかった。


ハロウィンの案内人という呪縛から逃げられないんだ。
モンスターには制限時間がない。

だからハロウィンは永遠に続く。
だから圭人は逃げられない。


ジャックはそれを心配してるんじゃないかな？
って、こんなのお節介だって言われちゃうか…。

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