トリック01 ページ21
私は居ても経ってもいられなくなって、急いで部屋から飛び出した。
少しずつ掴めてきたこの洋館のつくり。
だけど怖かった。
私のいる世界が、私のいるべき世界でなかったとしたら。
この世界に馴染んでしまうのがとても怖かった。
私は昨日、全員と初めて会った談話室に勢いよく入った。
「わ、びっくりした…。」
突然開いたドアに肩をはね上げたのは、圭人くん。
「おはよう、Aちゃん。昨日はよく眠れた？」
明けきらない朝。
けれど、それは正しかったんだ。
朝日が昇れば朝。
それは人間界で通用するルール。
けれどここは、『彼ら』の世界。
朝日が昇らずとも、時間で判断すれば既に時刻は朝。
「……ここは、どこなの？」
圭人くんの掛けてくれた挨拶にも答えないで、私は質問を投げかけた。
正直、この時の私は正気では無かったと思う。
焦っていたんだ。
自分の予想していた事態とは全く違うことが起こっていたから。
ある意味、これもドッキリの一種なのかもしれない。
だけどそれは、かなりタチの悪いドッキリ。
文字通り、早く寿命が縮んでしまいそうだ。
「Aちゃん？……どうしたの？」
真剣な面持ちで私の表情を覗き込んだ圭人くんの瞳は本気で心配している目だ。
私は間違っていた。
そして確信した。
彼らは演技の上手なプロの役者なんかじゃなかった。
彼らは立派にこの世界に生きている者だった。
皆がおかしいんじゃない。
私がおかしいだけなんだ。
ここに居るのは全員本物のモンスター。
役柄なんかじゃない。
正真正銘の、本物のモンスター。
モンスターの世界に入り込んでしまったんだ。
どうしてこんなことになったのか分からなかったけれど、私はただただ納得するより他なかった。
帰りたい。
元の世界に帰してよ。
勇気があったなら、すぐに言いたかった。
だけど言えなかった。
相手はモンスター。
私は人形を演じているただの人間。
もしも人間だと告げて、殺されたりしたら……。
そう思うと、恐怖でどうかしてしまいそうだった。
もうどうにもならない、後に引けない窮地に追い込まれた私。
どうやら、楽しい時間はここまで。
私の仲間は、味方は、一人もいない。
たった一人で探さなきゃ。
この世界から帰る方法を。
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春みかん(プロフ) - はい！！またお邪魔します(*’▽’) (2016年3月10日 22時) (
レス) id: fc4caac89c (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - 春みかんさん» ありがとうございます！大好きなんてお言葉、私にはもったいないです！更新頑張ります。またお時間がありましたらコメント欄にも遊びに来てくださいね！ (2016年3月9日 22時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
春みかん(プロフ) - この小説大好きです！！更新頑張ってください！ (2016年3月9日 22時) (レス) id: fc4caac89c (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - なる.さん» ありがとうございます！まだまだ至らない点も多いですが、最後までよろしくお願いします！ (2016年3月7日 7時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
なる.(プロフ) - この作品、すっごく面白いです、！更新頑張ってくださいさい。楽しみにしてます、！ (2016年3月7日 6時) (レス) id: 1c30441fc3 (このIDを非表示/違反報告)
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