じゃんぷはお医者さん

.　前進 ページ29

圭人サイド


お薬は、想像以上に痛くて苦しくて、辛いことも思い出してしまった。


“怠惰なやつ。”
“あいつはもっと努力すべき。”


いくつも厳しい言葉が降ってきて…


その時はこれが夢なのか、現実なのかもよく分からなくなっていて、それでもこれ以上太ってはいけない。


そう思ったら必死でチューブを抜いていた。


痛かったけど、皆に気づかれないように声も殺して…


でも結局、寝てしまってお薬も入れられてしまった。


その日の夜は、罪悪感から夢でうなされた。


朝起きると、酷く眠くてクマもくっきり…


やだなぁ…撮影行きたくないや…


でもサボるという選択肢はなくて、無理やり体を動かして演技だけに集中して一日をやり切った。


疲労感マックスの帰り道。


車に揺られウトウトしていると、スマホにメッセージがきた。


『今から宏太と圭人の家行くね！』


何で？…と思いつつ『了解！』とスタンプを送っておく。


それから家に着いてすぐ、二人は本当に来た。


部屋の中に招き入れて、とりあえずお茶を出す。


「何にもなくてごめんね。」


宏「いーの。俺らはね、圭人に伝えたい事があって来たの。」


えっ…何だろう…


何故だか凄く不安になった。


侑「そんな不安そうな顔しないでよ。いいことだから！」


「いいこと？」


宏「うん。あのさ、知念から聞いたんだけど…」


と薮ちゃんが話し出したのは昨日の夢の話。


別に知られても事実だから仕方ないって思っていたけど、やっぱりその話をされるのは辛い。


侑「ごめん、圭人の助けになりたかったから宏太にも相談した…でも！わかったことがあるよ。」


「それは大丈夫だけど…何がわかったの？」


侑「圭人が努力家だってこと。もちろん、僕らはそんなこと最初から知ってるけどね？」


「え…？」


何を言っているのか、わからない。


宏「調査したんだよ。スパイを使ってね。笑」


侑「ふふふ。」


可笑しそうに話す薮ちゃんと、意味深に笑う知念。


「どういう意味？」


侑「実はね…」


と知念が話し始めたことは、シンプルなことだった。


昨日、俺の話を聞いた知念がまず連絡を取った。


その相手は俺と同じドラマに出演している俳優の子。


知念はその子と普段から仲が良くて…


すごく明るくて、誠実な子だから俺もよく話していた。


「その子がス、スパイ…？」


侑「そう。圭人ってどんな子〜？って色んな人にさり気なく聞いてもらった。」

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