【文豪ストレイドッグス】蜂の在り処 4章

160針 ページ20

ポオの異能から戻ってきた乱歩と虫太郎。



虫太郎は自首をして警官と共にパトカーに乗り込んだ。




「探偵社が採用している手榴弾が流通中に盗まれた証拠が見付かったそうだ。


それが少女爆殺にも使われた事も裏が取れた」



箕浦は通話の内容を乱歩達に伝える。





「彼が異能を解除したんだ。


これで国木田も放免される」





『善かった…』




Aは胸元に手を置いて安堵の息を吐いた。




「乱歩君、身代わりの死体の顔であるが、傷から生活反応が出なかったそうである。


つまり」





「ああ、彼は一人も殺してない。


ドストエフスキーから貰った死体を落としただけ。

多分彼は今まで人を殺した事がない」





「なんと」


『……』





Aとポオは顔を見合わせた。





乱歩は少し何かを考えてから、おもむろにパトカーに近づく。






「乱歩君？」



スタスタと行ってしまった乱歩にポオは首を傾けた。





「乱歩君は何をするのであろうか？」





『…乱歩さんって、横暴でわがままで自分勝手で、とても大人には思えませんよね』





乱歩の背中を見つめたままAは笑みを零しながら、ポオの疑問に答える。






「ま、まあ、確かにそういう時も……」





『でもね、乱歩さんだって誰かに対して凄く優しくなる時があるんですよ』




「乱歩君が、であるか…？」





ポオは意外そうな表情でAを見た。





『想像出来ませんよね』





Aははにかみながら、戻ってきた乱歩に近づく。






「A、僕が横暴でわがままであとなんだって？」





『う、聞こえてたんですか……』





乱歩から指摘されてAは言葉を詰まらせる。





それからさっさと歩いて行ってしまう乱歩の背中を追いかけた。




乱歩は手に持っていた紙を火点器で燃やす。





その乱歩の表情を見てAは何も云わなかった。









・









「乱歩君聞け！


もうじき探偵社に大きな仕事が来るが絶対に受けるな！

受ければ探偵社は滅ぶ！


いいか 絶対──」





パトカーの無線から突如として虫太郎の叫び声が鳴り響く。






しかしそれは最後まで続かなかった。





虫太郎の声は何発もの銃声によって掻き消された。






銃声が止んだ無線機からは砂嵐のようなザーっという音だけが鳴り響くだけだった。






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