キリ華･アイルレイス ページ31
──三日後
『お、母さん…？』
「A!!」
病院で昼食を食べていたAは驚きのあまり、持ち上げた箸をそのままに固まった。
そんなAに走り寄って抱きつく女性。
『痛たたたた!!お母さん、痛い!!痛いです！右腕まだ治ってないから!!』
「だってだって!!夏合宿中に敵に襲われて、攫われて、神野区のことだってあって!!
私とっても心配したのよ!!」
Aをきつく抱きしめたまま、女性は涙声で叫んだ。
「おおーい、姉さんそれくらいにしてやれよ。
Aの怪我が悪化するぞ」
ドア付近で2人のやり取りを見ていたエアレーダーは、ようやくAに助け舟をだす。
やっとのことで離してくれた女性に、Aは眉尻を下げながら笑顔を向けた。
『心配させてごめんなさい…今日には退院出来るくらい回復してるから大丈夫だよ。
それよりもどうしてお母さんが日本に？』
Aの母であり、エアレーダーの実の姉であるキリ華は、イギリスで生活しているはずである。
そのキリ華が日本に、そしてAの元に来たことにAは純粋に驚いていた。
「学校からもキリ斗からも連絡があって、Aが入院してるって聞いたら来ないわけには行かないでしょう？
お父さんもフィルにもぜひ行くべきだって言われたし」
純日本人特有の黒い髪を微かに揺らしながら、キリ華は頬に手を当て軽く首を傾けた。
「それで、体調は本当に大丈夫なの？腕の怪我はリカバリーガールに治してもらってないの？」
さすが元雄英生とだけあって雄英の教師陣には詳しい。
『うん、もちろん診て貰ったけど、万が一治癒して私の体力がまだ完全じゃなかったら危険だからって。
少し様子を見て完全に体力が回復したことが分かったら治癒してくれるって言ってたよ』
そう、と零したキリ華はまだ不安事が残っているのか、その視線を彷徨わせていた。
『お母さん？』
その様子にAも心配そうな表情を浮かべる。
「A、本当にこれから大丈夫？」
キリ華の当然の質問にAは目を伏せる。
「日本に居て欲しくないわけじゃないの。
……ただ、こっちで一人で生活していて…月蔵器や敵連合の危険がいつ迫って来るか分からないでしょ。
…だからやっぱり一人暮らしは──」
「あ、その事だけどよ…雄英からこんな手紙が届いてるんだわ」
話しを遮ってエアレーダーが差し出した紙に、Aとキリ華は目を合わせた。
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作者名：だし丸 | 作成日時：2019年9月4日 14時
