ピザーラ神野店 ページ22
『え？』
場の雰囲気にそぐわない明るい声に思わずAが考えを止めた。
──瞬間
カウンターの向かいの壁が大きな音と共に壊れた。
煉瓦が吹っ飛び、近くにいた敵連合のメンバーが床に転がり倒れる。
「何だぁ!!?」
「黒霧！」
「ゲート…」
「!!──Aチャ」
「先制必縛」
ウルシ鎖牢!!
一瞬のうちに拘束された敵連合。
「荼毘、燃やせ!!」
月蔵はAに手を伸ばした姿勢のまま拘束され、それが木であることに気がつくと荼毘に叫んだ。
「木ィ!?んなもん…」
メラ…と荼毘の体から青い炎が揺らぐ。
「逸んなよ、おとなしくしといた方が…身の為だぜ」
しかしそれよりもはやく誰かが荼毘の頭を蹴りつけたことにより、カク、と意識を失う荼毘。
「さすが若手実力派だシンリンカムイ!!
そして目にも止まらぬ古豪グラントリノ!!
もう逃げられんぞ敵連合…何故って!?
我々が来た！」
殴り壊した壁から一瞬のうちに室内に入ってきたヒーロー達。
そして鋭い眼差しで敵連合を睨むオールマイト。
「オールマイト…!!あの会見後に、まさかタイミング示し合わせて…！」
トゥワイスやトガが拘束から抜け出そうとするが、シンリンカムイの木はさらに拘束を強めた。
「攻勢時ほど守りが疎かになるものだ…」
ドアの隙間から薄い男が入り込み、鍵を外して扉をあける。
「ピザーラ神野店は俺たちだけじゃない」
Aがそれに釣られて外に意識を向けると、建物の周りを囲むように武装した警察とエンデヴァーが守りを固めていた。
「怖かったろうに…よく耐えた！
ごめんな…もう大丈夫だ少年、少女！」
オールマイトが戸惑っている爆豪とAに顔を向けて、いつもの笑顔で言った。
「こっ…怖くねえよヨユーだクソッ!!」
強がりを見せる爆豪に安心したオールマイトは未だカウンターの中にいるAに手を差し出した。
「Aくんこちらに来るんだ!!」
『あ、はい…』
自分の名前を呼ばれたAははっとしてカウンターの内側から出た。
その顔には安堵と疲労が見える。
Aが爆豪の隣に立ったのを確認してからオールマイトは拘束されたままの死柄木に視線を動かした。
「せっかく色々こねくり回してたのに…何そっちから来てくれてんだよラスボス…」
怒りを必死に抑え込むような低い声。
死柄木は目を細めてオールマイトを睨んでいた。
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作者名：だし丸 | 作成日時：2019年9月4日 14時
