8針 ページ9
虎の姿は跡形もなく消え敦くんが現れる。
そのまま敦くんは治くんの方に倒れ、治くんもそれを支えるが
「男と抱き合う趣味はない」
と言って敦くんを離す。
敦くんはもちろん床に倒れる。
うわ、いい音したな、
敦くん今日は何かと床に叩きつけられてるな。
木箱から飛び降りて敦くんに近づき顔を覗き込もうとした時
「おい 太宰!A!」
入口の方から聞きなれた上司の声が聞こえた。
どうやら国木田さんが到着したらしい。
『お疲れ様です、国木田さん』
「遅かったね、虎は捕まえたよ」
治くんの指さす先には床で寝ている敦くん。
「その小僧……じゃあそいつが」
『どうやら変身してる間の記憶がないようです』
「次から事前に説明しろ、肝を冷やしたぞ」
国木田さんは店で渡された紙を片手にため息をついた。
その紙には、
十五番街の西倉庫に虎が出る
逃げられぬよう周囲を固めろ
と書いてあった。
「おかげで非番の奴らまで駆り出す始末だ
皆に酒でも奢れ」
入口から3人の人影が入ってくる。
「なンだ 怪我人はなしかい?つまんないねェ」
−与謝野晶子 能力名【君死給勿】−
「はっはっは 中々できるようになったじゃないか
まぁ僕には及ばないけどね」
−江戸川乱歩 能力名【超推理】−
「でもそのヒトどうするんです?
自覚はなかったわけでしょ?」
−宮沢賢治 能力名【雨ニモマケズ】−
「どうする太宰、A?
一応区の災害指定猛獣だぞ」
−国木田独歩 能力名【独歩吟各】−
「うふふ 実はもう決めてある」
−太宰治 能力名【人間失格】−
治くんはちらっと敦くんの方を見る。
「うちの社員にする」
一瞬その場が静寂に包まれた。
「はああああ!?」
次の瞬間には国木田さんの驚く声が響き渡った。
やっぱりね、治くんの考えることだからこうなるだろうとは思った。
敦くんに目線を移す。
「こんな奴がどこでの垂れ死んだって
いや、いっそ喰われて死んだ方が──」
敦くんのさっきの言葉が頭の中に思い浮かんだ。
『死んだ方がいい人間なんているわけない………』
「A?」
小さい声で云ったつもりが横にいた治くんには聞こえてしまったようだ。
私はいまだに驚いてる皆さんに笑いかけて云った。
『いいんじゃないですか?
きっと彼ならこの街を守ってくれますよ!』
これが事の始まり
−東野A 能力名【天空の蜂】−
123人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:だし丸 | 作成日時:2017年2月3日 0時