5針 ページ6
辺りが暗闇に包まれた頃私達3人は倉庫内にいた。
治くんは相変わらずあの趣味の悪い本を読んでいる。
敦くんはそんな治くんをうげって感じで見ながら座っている。
私は入口近くに腕を組んでよっかかる。
「……本当にここに現れるんですか?」
「本当だよ」
治くんは本から目を離さずに答えた。
しかし敦くんの不安そうな表情は変わらない。
そりゃそうか。
自分の命かかってるんだ、どう考えたって不安になるのは当たり前だ。
そんな敦くんを見かねた治くんが声をかける。
「心配いらない。
虎が現れても私の敵じゃない。
こう見えても【武装探偵社】の一隅だ」
「はは、凄いですね自信のある人は」
敦くんの乾いた笑い声が響いた。
「僕なんか孤児院でもずっと駄目な奴って言われてて」
敦くんは膝に顔を埋めてか細い声で続けた。
「こんな奴がどこで野垂れ死んだって
いや いっそのこと食われて死んだ方が──」
『敦くん』
少し声を鋭くすると彼は顔を上げた。
『この世に死んだ方がいい人間なんてどこにもいないよ』
軽く微笑みながら言う。
こうでもしないと敦くんがどんどん負の感情に飲み込まれそうだった。
敦くんはどこか複雑そうな顔で私を見つめる。
「却説、
そろそろかな」
治くんが窓の外を見つめながらつぶやいた。
敦くんもつられて窓を見上げようとした時
ガタンッッ
奥の方で物音がした。
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作者名:だし丸 | 作成日時:2017年2月3日 0時