48針 ページ49
先生の方を見ると、先生の手に持っていた銃口から煙が出ている。
どうやら先生が針を撃って止めてくれたらしい。
「え、は?」
中原くんは状況がよく分かってないらしくその場に座り込む。
先生は中原くんに歩み寄ると
「この、馬鹿!」
そう言って中原くんの頭に拳を落とした。
「痛ってぇ!!なにすんだよ!」
中原くんは頭を抑えて涙目になっている。
威嚇する小動物みたいで可愛いかも、なんて場違いなことを考えていた。
「A、大丈夫かえ?」
紅葉姐さんは私に手を差し出して心配するように顔をのぞき込んでくる。
『あ、はい。
大丈夫です、ちょっと苦しかったですけど。』
差し出された手を取り私は立ち上がる。
「異能力は禁止っつたよな?
無意識とはいえ、危ないことするんじゃねぇ!」
先生は中原くんを叱っている。
先生の言葉で始めて自分が異能を使っていたことに気づいた中原くんは目を大きく開いて驚いていた。
「A、お前もだ!
あの状況で異能力を使うことはしょうがないが、使い方をもっと考えろ。
俺が撃ってなかったら中也のこと殺してたぞ!」
先生は私の方を向いて叱る。
『はい、すいません……。』
確かに先生の言う通りだ。
あそこで針を止める力が私にあったらもっと…
いや、それ以前に中原くんの頭など狙うべきでは無かった、と心の中で反省する。
「草田男、何を偉そうに言っておる!
お前が早々に止めておけばよかったものを…」
紅葉姐さんが呆れながら言うと先生はうっ、と言葉を詰まらせた。
「まぁよい、死人が出なかっただけましじゃ。」
紅葉姐さんは中原くんに近寄ると立たせる。
中原くんはまだショックを受けているみたいで下を向いている。
「ま、とりあえず約束は約束だ。
この闘いはAの勝ち、中也は大人しくAに教われ。」
そう言って中原くんの頭を撫でる。
私は中原くんの前に立って、『よろしくお願いします。』と出来るだけ笑顔で言った。
中原くんはチラリとこちらを見ると小さな声で
「でも、俺はお前のことを殺そうとした。」
そう言った。
中原くんは無意識とはいえ私のことを殺そうとしたことに罪悪感を感じているみたい。
私は中原くんの手をとりギュッと握る。
『私だって、先生が止めていなかったら中原くんのことを殺していました。
だからお互い様です。』
そう言うと中原くんは少し表情を和らげて
「よろしく、A」
と言った。
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作者名:だし丸 | 作成日時:2017年2月3日 0時