46針 ページ47
A side
間隔をあけて私と中原くんは立つ。
呼吸を静かに整える。
これも先生に教わったこと。
戦う時はまず冷静になる、落ち着いて相手の動きを読む。
先生から教えられたことを頭の中で反芻し、体を軽く構える。
身長は中原くんより少し私の方が大きいけど、それでも力の差でいったら中原くんの方が強い、と思う。
でも力の弱い私は、力で勝つんじゃなくて技で勝つ。
落ち着け、落ち着け、先生とやる時と同じように。
中原くんも同じように構えてお互い準備が出来たことを告げる。
「始めっ!!」
先生の掛け声と共に中原くんは私に向かって走り出す。
繰り出される拳を私はギリギリで躱していく。
中原くんの体術は、基礎は出来ているようでしかも速い。
それでも、先生の方がもっと速い!
私は顔の横にあった腕を掴みそのまま背負投をする。
「うぅっ!!」
地面に落とされた中原くんは少し呻いたがすぐに体制を戻して私に飛びかかる。
ここで私は気づいた。
中原くんの動きは全部、さっきと同じように繰り返されている。
右の拳の次に下からの左の拳、それが避けられたら蹴りがくる。
基礎しか知らないためか動きがパターン化している。
私はそれに合わせて腕で拳や蹴りをいなしていく。
「こんのッッ!」
攻撃が通らなくなったことに焦りを感じたのか、中原くんは大きく体を捻り回し蹴りをする。
咄嗟のことで驚いたがすぐに両腕でガードする。
少しバランスを崩したがそのまま倒れることなく私も体を捻る。
『回し蹴りは、こうやります』
私の言ったことが聞き取れたのか中原くんはすぐに後ろに飛び退こうとしたが、それよりも速く私の蹴りが中原くんの体に入る。
中原くんの体はそのまま吹っ飛び、壁にぶつかり派手な音がする。
『はぁっ…』
最後のは無理に体を捻ったから少し腰が痛い……。
「ほう、すごいのぅ。」
「どうよ?うちのAは。」
紅葉姐さんや先生が端の方でそれぞれ感想を述べる。
先生に関してはすごく自慢げな顔で笑っていた。
そこで私は壁の下に倒れ込んでいる中原くんが一向に起き上がらないことに気がつく。
『中原くん、大丈夫ですか?』
不安になった私は中原くんに声をかけ近寄ろうとした。
その時私の体に異変が起きる。
ミシミシと体が軋んでその場に立っていられないほど重くなった。
123人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:だし丸 | 作成日時:2017年2月3日 0時