42針 ページ43
「Aの異能力は殺傷能力が高いから、それは人を殺さないための道具だと思ってくれればいい。」
『人を殺さないための道具が私に必要ですか？」
ポートマフィアというのは人を殺すことは避けて通れないそういう場所であるのに、私にそれをさせない？
「今日みたいに人を殺さずに捕えなきゃならない日だって沢山ある。その時のためだ。
Aにはこの2ヶ月でナイフと銃の使い方を覚えさせたけど両方とも簡単に人を殺せる道具だ。お前には必要ない。異能力で充分だ。」
『人を殺すときは異能力、殺さない時はこれ。』
手に持っている兜割りを見つめる。
「出来るな？」
先生は確認するように聞いてきた。
『はい、もちろんです！』
兜割りをギュッと握りしめる。
不思議と自分の手に合っているような感覚がする。
「じゃ、明日からはそれを使った体術の練習するから。」
先生はまたデスクに戻って書類の続きをする。
私は先生からの貰い物が嬉しくて鞘から出したり入れたりを繰り返す。
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草田男 side
初めてのAの外での仕事。
想像以上だった。
2ヶ月間で基礎的な体術、武器の使い方、異能力の制御の仕方を教え込んだ。
Aはたった2ヶ月でそれらを全てマスターしたのだ。
初日に怯えていた俺の殺気でさえ次の日からは恐がりはしていたが、俺に対して同じように殺気を向けてくる。
体術だってまだまだ動きは硬いがポートマフィアの下っ端なら倒せるだろう。
そこまで出来たから俺は油断しきっていたのかもしれない。
倉庫の中でAは初めて人を殺した。
誰だって最初は殺すことに躊躇し終わったら後悔と虚無に襲われる、はずなのに。
Aは何のためらいもなく人を殺していった。
異能力で針をいくつもだし、敵の体に突き刺していく。
部下達は顔を青くして目を背けていた者もいた。
その中でAは敵がいなくなるまで止まらなかった。
しかもそれが無意識なのだから余計危ない。
異能力だって万能じゃない。
いつ使えなくなるか分からないし、明日も同じように使えるという保証はない。
だから俺はAに体術を教えている。
異能力を使えなくなった時に生き延びる術を増やさせた。
首領に今日のことを報告すると「ポートマフィアらしい残酷な行為だ、素晴らしい」と言った。
あぁ、忌々しい。
A、俺みたいにはなるな……。
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作者名：だし丸 | 作成日時：2017年2月3日 0時
