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41針 ページ42

「A」


先生は私を見下ろす。


目を合わせられなくて下を向く、ぎゅっと目をつぶる。



『ご…めんな…さい。』


私の口から出た言葉は想像以上に震えていた。



はぁ、と先生はもう1度ため息をつき、手をあげる。




殴られる、そう思って身を固めたが先生の手は頭の上にポンと乗せられただけだった。



「帰るぞ。」


先生はそう言って踵を返しドアに向かって歩き出す。



『え…?』



「はやく、置いてくぞ。」



先生は振り返ってまた言った。


『は、はい。』


私は急いで先生の後を追う。



周りにいたスーツの人達も少しずつ倉庫の外に出た。









ポートマフィアのビルに戻って「返り血落としてこい。」と先生にシャワー室に投げ込まれた。



改めて自分の体を見渡すと洋服はもちろん顔や髪までベッタリと血が付いていた。



シャワーを浴び終わって先生の書斎に戻る。



先生はデスクで書類を眺めていた。



『あの、先生』


「あぁ、出たか、ちょっとそこ座れ。」



先生はデスクの前にあるローテブルとソファを指さした。



『はい……。』


私が座ると先生も目の前に座った。




『すいませんでした。』



私は頭を下げて謝る。


言われた通りにできなかったこと、異能力を上手く使いこなせなかったことがとても悔しかった。



「頭、上げろ。」



そう言われてゆっくりと頭を上げて、おそるおそる先生を見る。



先生は困り顔で笑っていた。



「怒ってるわけじゃないないんだ。
ただどうして全員殺したのか聞きたい。」



先生の声色は怒ってはいない。



『あんまり、異能力を使っている時の記憶がないんです。気づいたらみんな死んでて……。』



先生はふーん、と言って何かを考え始めた。



「Aの異能力は強力だから、まだうまくコントロール出来ないんだろうな。

意識が持っていかれてるのかもしれない、危険だな。」



『どうすればいいんでしょうか……。』


膝の上で手を強く握る。
どうして、もっと上手く出来ないんだろう……。




「これ、やる。」



先生はそう言って何かを投げた。


『え、わっっ!!』


私はそれを間一髪で受け止める。



渡されたものは小刀のような形で鞘から柄を引き抜くと、刃ではなく鉄のような素材だった。



「兜割り、俺の異能で作ってみた。」



『兜割り…あ、この前読んだ本に出てきました。』


「俺もあの本結構気に入ってるから作って見たくなってな。今度からそれ使って。」

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作者名:だし丸 | 作成日時:2017年2月3日 0時

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