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4針 ページ5

『敦くん?』

敦くんは向きを変えて

「僕はこれで失礼します」

なんて言いながら四つん這いのまま店から出ようとする。

しかし国木田さんによって首根っこを捕まれてしまう。


「無理だ!
奴に人が敵うわけない!」

「貴様《人食い虎》を知っているのか?」

「あいつは僕を狙ってる!
この辺に出たんなら早く逃げないと」


冷静さを失った敦くん。

国木田さんは首根っこから手を離し
ビタンッと敦くんの片手を抑えて床に叩きつけた。


うわ、顎痛そう……


「茶漬け代は腕1本かもしくは凡て話すかだな」

腕を曲げようとする国木田さんを治くんが止め敦くんの話しを促す。



話しによると
例の《人食い虎》は敦くんの施設を壊した挙句施設から追い出された敦くんを追って街に降りてきたらしい。


国木田さんの調べた虎の目撃情報と敦くんの行動が重なる。



あまりに出来すぎていないか?
そもそもこの街にそんな大きな虎がいたらすぐに見つかるはずなのに………


ここで私に一つの案が思い浮かぶ、が確証がないし信じたくもない。


私と同じように何かを考え込んでいた治くんは


「敦君。これから暇?」

あ、嫌な目だ

私と同じように危機を察知した敦くん。

「虎探しを手伝ってくれないかな」

もちろん敦くんは断った。


しかし報酬が出るという言葉によりおれた。


治くんは何かを書いた紙を国木田さんに渡す。


「国木田くんは社に戻ってこの紙を社長に」

「おい、まずは情報の裏を取って−」

「いいから」

国木田さんも治くんに根負けしたようで渋々了承した。

「Aはちょっと手伝ってね」

治くんは私の方を向いて軽く笑みを見せる。

あの笑顔をする時は私に拒否権が無い。
目先のことだけじゃなくてその後のことも考えてるな………

嫌な予感しかしない

ため息をこぼして

『わかった』とだけ伝える。









店から出て、国木田さんは探偵社に、私、治くん、敦くんは治くんが虎が出ると予測した倉庫に向かう。


私と治くんが横に並んでその後ろを敦くんが不安そうについてくる。

『治くん、何考えてるの?』

コソッと治くんに言うと

「Aならもう分かってるでしょ、
私がこれから何をしようとしてるのか」


『私が分かってるのは虎退治のことだけ
その先まではわかんないよ』


「私の考えが凡て当たればきっと彼はこの街にとって必要不可欠な存在になるよ」


治くんはまるで遠い何かを見るような目でヨコハマの海を見つめていた。

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作者名:だし丸 | 作成日時:2017年2月3日 0時

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