32針 ページ33
「草田男、直ぐに終わらせろ。」
首領は前を歩きながら言った。
何をとは言わないがここに来た本来の目的のことを言ったのだろう。
部屋につくと箱とそれを運んできた男が入ってきた。
男は箱の中から鎖を引っ張り女の子を中から引っ張り出した。
男は続けて女の子の異能について説明し始めた。
針を作り出す能力ねぇ。
マフィア向きだな。
説明が終わると男は女の子を前に突き出す。
男は少し浮ついた声で目を細めながら
「それでは代金を頂戴致しても宜しいでしょうか？」
と言った。
「嗚呼、そうだったな。草田男。」
首領はチラリとこちらを見る。
作戦開始ってことね。
「はいはーい。」
俺はホルスターから銃を抜き目の前の男に向かって撃つ。
「な、何を……？」
男は重力にしたがい崩れ落ち、地面に赤い水たまりを作った。
すぐにドアの開く音がして、中に部下が数人入ってくる。
「首領、上の制圧が完了しました！」
それに続き機関銃を持った部下も続々と入ってくる。
「撤収するぞ、後片付けもしておけ。
草田男、その子供はお前に任せる。」
首領は何人かの部下を連れていき歩いていく。
結局あの子は俺任せ、か………。
「了解しました、首領。」
俺は首領が部屋を出たことを確認すると、女の子の後ろにまわり、目隠しをはずしてやる。
女の子は眩しそうにゆっくり目を開ける。
綺麗な緑色の目だ。
女の子はゆっくり部屋を見渡して最後に俺の方に体を向け、じっと目を見つめる。
「初めまして、お嬢ちゃん！
俺の名前は中村草田男。一応お嬢ちゃんの上司になる人間だ。
宜しくな！」
なるべく怖がらせたくなかったから明るく自己紹介をして、手を差し出す。
女の子はゆっくり俺の手に自分の手を重ねる。
怖がられてないことに安心し、握手の意味は知ってるのか
と、俺が思った瞬間
『異能力 【天空の蜂】』
そう言った。
俺は瞬間的に手を離し後ろに飛び退く。
俺の手があった位置の真下には30cmくらいの針が突き刺さっていた。
やっべえ、おもしれぇ！！
自然とにやけてしまいそうになる頬を必死に隠し、女の子に目を向ける。
あの子は″怖がる″ことなんてしなかった！
裏の社会じゃ恐怖の対象としてしか見られていない俺のことを！
もちろん俺のことを知らないから、というのもあるだろうけど、この状況で俺のことを殺そうとした！
それが俺にとって凄く嬉しく、面白いことに感じた。
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作者名：だし丸 | 作成日時：2017年2月3日 0時
