検索窓
今日:31 hit、昨日:15 hit、合計:128,643 hit

28針 ページ29

No side

ピチャンと雫が落ちる。
窓はなく薄暗い、ジメジメとした空気が漂う部屋の奥にAは鎖で繋がれていた。


『………ん…』


ゆっくりとAの瞼が開かれる。

『……どこ?』


辺りを見渡すが薄暗いせいでよく見えない。

そこでAは自分が鎖で繋がれていることに気がついた。


するとどこからかキィと音がした。

音の方向を見ると奥にある階段のドアが開いた。
微かに光が漏れてくる。


そこから入って来たのは


「お、目ぇ覚ました?おはよう。」


あの茶髪の男−中村草田男−だった。


男はどこかに置いてあった椅子を引きずって持ってくるとAの前に置いて座った。

背もたれを前に向けてその上に腕を組む。


Aはじっと男を見つめる。


「こんにちは、お嬢ちゃん。
前にも言ったと思うけど俺は中村草田男、よろしくね。」


『………』


どう反応していいか分からないAは黙っていた。


そして


『私のことを殺すの?』


小さく言った。


「ん〜、殺す、って言ったらどうする?」


草田男は頬杖をついたまま言った。


『…………別に、構わない。』


Aは視線を下に落とした。


「君はさ、生きたくないの?
あの人売りの所でも、今でも、思ったことがあるんだけどさ、
君の異能は見た方向に手を向ければ針を出せるんだろう?
ならなんでその鎖を壊さなかったの?

てっきり俺は逃げるだろうと思って君に目隠しをしなかったんだけど。」


草田男はAの手を拘束している鎖を指さしながら言った。


『あそこが………』


「ん?」


『あそこが私の居場所だったから。』


「どういうこと?」


Aの目に光は無く、下に向けられたままだった。



『………気づいたらあそこにいて、あそこが私の居場所だったから。
だけど貴方達が壊した。
だから私の居場所はなくなった。
生きていても意味が無い、から死んでも構わない。』


一気に話したAに草田男は少し目を丸くした。


「あの場所は君にとってそんなにいい場所だったの?」


『別に、ただあそこしか無かったから。』


「ふーん…。」


草田男は少し考えると椅子の向きを変えて座った。


「結論から言うとね、君は殺さないよ。」


Aはゆっくりと顔を上げて草田男を見る。
その表情は僅かだが驚いているように見えた。


「君の異能は俺たちマフィアにとって必要なんだ。
だからさマフィアに来てくれない?」

草田男は笑顔で言った。


『嫌だ。』


「え?」

29針→←27針



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.3/10 (55 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
123人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:だし丸 | 作成日時:2017年2月3日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。