17針 ページ18
「珍しいじゃないか。Aが怒るなんて。」
路地裏を出てすぐ、治くんは面白いものを見るような目で私に言った。
『別に、私だって怒る時ぐらいありますよ。』
「呼び方とかもまだ気にしてるんだねぇ。」
明らかに声色が楽しそうで若干イラッともしたがそこを何とか抑えてナオミちゃんを運ぶことに専念する。
『堅苦しく呼ばれるのが嫌いなだけです!』
「じゃあAも今みたいな敬語はちゃんとなおそうね。私に対してもっと気楽で良いんだよ。」
たまに癖でポロッと出ちゃってるよー、と前を歩く治くんが意地悪く言った。
『うっさい。』
ガッと治くんの脛を後ろから蹴ってやる。
「痛っ!?ちょっと私怪我人を2人も運んでいるのだよ!!」
若干涙目の治くんが私の方を向いた。
『治くんの口が悪い。』
そんな下らないやりとりをして探偵社に着いた。
「おいっ!太宰だけでなくAまでどこに行って……!?」
探偵社のドアを開けると国木田さんが鬼の形相で立っていたが、私や治くんが抱えている3人を見るとすぐに医務室に連れていってくれた。
敦くんは怪我は特になかったので医務室のベットに、谷崎兄妹はすぐに与謝野先生の元へ運ばれた。
きっとあれは3、4回コースだろうな、なんて不吉なことをソファに座りながら考える。
「A何があったのか説明しろ。」
国木田さんは神妙な顔で近づいて来た。
『治くんから聞いてください。』と言おうとした所でやめた。
あの人のことだ、説明するのが面倒とか言ってさっさとどこかに行ってしまっただろう。
はぁ、とため息をついて事の全容を国木田さんに話した。
もちろん私と治くんがマフィアにいたことは伏せておいた。
「七十億か………
どこの誰だそんな金を小僧に懸けた奴は。」
『今の時点ではまだ分かりません。
しかし芥川の言っていたことを考えると、マフィアが探偵社に襲撃してくるでしょうね。
敦くんを狙って。』
国木田さんは深いため息を吐いた。
「今のうちに壊されたくないものは整理しておいた方が良さそうだな。」
『そうですね、それと社員の皆さんにも一応伝えておきましょう。』
私は立ち上がって軽く伸びをする。
「A、お前は事務員や社員にこの事を伝えて書類の整理を頼む。小僧には俺から伝えよう。」
そう言って国木田さんは片付けに取り掛かった。
私もそれに続いて事務員や探偵社の人達に説明をした。
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作者名:だし丸 | 作成日時:2017年2月3日 0時