14針 ページ15
ソファに寝っ転がっていた治くんの目が勢いよく開かれる。
その瞬間私と治くんはすぐさま探偵社を飛び出した。
下に降りてすぐ目的地に向かって走り出す。
「A、目的の場所までどのくらいの距離だい?」
『ここからなら走って10分もかからないですよ』
国木田さんに何も言わずに出てきてしまったけど大丈夫だろうか?
いや、それよりも今は敦くんと谷崎くん、ナオミちゃんの方が優先だな。
頼むから死ぬことだけは無いように………!!
不安をなるべく感じないように、一刻も早く目的地につくために走ることに集中した。
しばらく2人で走っていると依頼人の女性が言っていた場所に近づいた。
「何やら激しい物音がするね」
『まさに交戦中って感じか』
曲がり角を抜けると虎に変化した敦くんと見覚えのある黒い外套の少年がまさにぶつかる瞬間だった。
「はぁーい、そこまでー」
隣にいたはずの治くんはいつのまにか2人の間に入り異能力無効化で戦いを止めた。
「貴方は探偵社の──!
何故ここに!?」
依頼人の女性、樋口さんは治くんがここにいることに驚いている。
『樋口さん、ポートマフィアの人間ならいつなん時だって気を張ってないとダメですよ。
どっかの手癖の悪い人が思わぬプレゼントを忍び込ませるかもしれないんですから』
樋口さんの後ろからなるべく明るい口調で声をかける。
気配を消していたせいで声をかけなければずっと気づかれなかっただろうな。
その証拠に樋口さんはバッと振り向き大層驚いた顔を見せてくれた。
「なっ!!貴方まで!?」
「そうそう、Aの言う通りだよ。
美人さんの行動が気になっちゃう質でね。
こっそり聞かせて貰ってた。」
「真逆……」
そこでようやく樋口さんは理解したようで自分のポケットから盗聴器を取り出した。
「では最初から──
私の計画を見抜いて……」
「そゆこと」
治くんはにっこりと笑って敦くんの元にしゃがむ。
『さっ、敦くんの無事も確認できたし、
怪我人もいるみたいだからさっさと戻ろうか』
樋口さんと先刻からまったく言葉を発さない黒い少年の横を通り過ぎて、血塗れの谷崎くんとナオミちゃんの近くに寄る。
「ま……待ちなさい!
生きて帰す訳には──」
樋口さんが銃口をこちらに向ける。
そこで
「くく……くくく」
彼の懐かしい笑い声が聞こえた。
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作者名:だし丸 | 作成日時:2017年2月3日 0時