13針 ページ14
準備をする敦くん、動きがカチコチしてる。
まぁ、初仕事だし緊張もするか
見かねた国木田さんが敦くんに声をかけた。
「この街で生き残るコツを一つだけ教えてやる」
そう言って手帳から1枚の写真を取り出した。
その写真に写っていたのは黒い髪、黒い洋服、細いからだ、光を映さない目
「こいつには遭うな、遭ったら逃げろ」
「この人は──?」
敦くんの問いに横から治くんがヒョイと顔を出す。
「マフィアだよ。
尤も他に呼びようがないからそう呼んでるだけだけどね」
『港を縄張りにする凶悪なポートマフィアの使い狗だよ、名前は芥川。
マフィア自体が結構おっかないけどその人は特に凶悪で危険だから探偵社でも手に負えない』
「何故──、
危険なのですか?」
「そいつが異能力者だからだ。
殺戮に特化した頗る残忍な能力で軍警でも手に負えん
俺でも──奴と戦うのは御免だ」
本心から言ってるようで国木田さんの表情はいつもに増して険しい。
さっきは敦くんの手前、ああ言ったけど
正直いって私にとってはなんともない存在だなぁ
素直に喋れば返してくれるし、意外と可愛い一面もあるし。
敦くんは国木田さんの話しを聞いて顔を青くしながら探偵社を出た。
自分の机に戻って書類の整理を始める。
国木田さんは掃除をしている。
治くんはソファに寝っ転がって奇妙な歌を歌っている。
国木田さんは掃除の邪魔だから、と
治くんを退かせようとするがそんなことで治くんが退くわけもない。
国木田さんは治くんのヘッドホンをとって
「おい太宰!仕事は如何した!」
と叫んだが、いつの間にヘッドホンは治くんの手元に戻っていた。
「天の啓示待ち♪
それと書類ならAのとこに混ざってるよ」
バキッ
変な音がして自分の手元を見ると握っていたペンが真っ二つに折れていた。
いかん、いかん、思わず力が入ってしまった
一息吐いて心を落ち着かせる。
『治くん、今度倍で返すから』
新しいペンを握り直して二人分の書類に取り掛かる。
『天の啓示が無いといいんだけどね』
呟いた独り言は誰にも聞かれることなく消えていった。
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作者名:だし丸 | 作成日時:2017年2月3日 0時