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6章 1-2 ページ33

指令席の安吾が身を乗り出す。



「!時計塔の従騎士か」


″SOUND ONLY″と表示された液晶画面から、艷めいた声が届けられた。



『ご機嫌麗しゅう…』



その声の持ち主はディム・アガサ・クリスティ爵。


特務課全員が硬直し、息を呑む。


『欧州諸国を代表して、貴国の危機的状況に同情いたしますわ』


気品と欺瞞に満ちた声で、アガサは続ける。



『つきましては』


告げられたのは、終焉の知らせだった。



『世界への霧の蔓延を未然に防ぐため、焼却の異能者を派遣してさしあげました』



「焼却の異能者…!?」


安吾の喉が渇いてひりつく。



「発動予定時刻は?」



『きっちり三〇分後。

夜明けとともに……』



鈴を転がす声が答え、通信が一方的に切断される。


もはや提案ではなく、宣言であった。



事実、すでに英国の紋章が施された爆撃機は発進しており、日本に向かう航路上にある。



欧州諸国は、澁澤龍彦を日本ごと沈めてしまう気なのだ。




三〇分、たった三〇分しか、もう残されていない。



そのわずかな時間で赤い霧を消すことができなければ──。



「……ヨコハマが焼かれる」



安吾の茫然とした声が、通信室に落ちる。



誰も、何も答えられない。



猥雑な機械音だけが鳴り続けていた。












そしてその頃、つい先程まで通信していたアガサは優雅に紅茶を飲んでいた。



そしてその周りには小さなクッキーやケーキなど焼き菓子が揃えられている。




コトリとアガサがカップをソーサーに置くのを待っていたかのように、アガサの後ろに控えていた青年が問いかける。




「よろしかったのですか?」



「何がでしょう?」




アガサはゆっくりとそちらに目を向けた。


たったそれだけの所作でも優雅さと気品に満ちている。





「あの場所には恐らく、いえ確実に彼女が居ます。


焼却の異能者を派遣しましたが、彼女も焼かれてしまいますが?」



青年の問いにアガサは笑みを浮かべる。




「それは心配しておりませんの。


あの子の異能はどんなことをしても持ち主を生かそうとしますから。


……それに、この程度で私のハニービーが死ぬことは有り得ませんわ」




そう云うとアガサは再びカップに手を伸ばした。



青年もそれ以上は口を開くことなく傍らに控える。




アガサは嬉しそうな楽しそうな恍惚とした笑顔だった。

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jumpcontrolbear(プロフ) - 消しゴムクイーンさん» コメントありがとうございます!!そうだったんですか……ぜひ余裕がありましたらDVDでご覧下さい!終始悶えます(笑) (2018年9月9日 1時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
消しゴムクイーン(プロフ) - こんにちは。DEAD APPLE…私、見れなかったんですよ!見たかった……これからも頑張ってください!! (2018年8月15日 13時) (レス) id: b53efceb36 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - なたさん» コメントありがとうございます!!本編の方も読んでくださってるんですね!ありがとうございます!すごく嬉しいです!更新頑張ります! (2018年5月4日 23時) (レス) id: c47121f885 (このIDを非表示/違反報告)
なた - このシリーズめっちゃ好きなのでデッドアップル編まで読めて嬉しいです!これからも頑張ってください (2018年5月4日 22時) (レス) id: a61dc9da8f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:だし丸 | 作成日時:2018年3月23日 18時

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