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2章 1-1 ページ13

A side



目だけを動かして周りの白い霧を見る。



ヨコハマの街は静まり返り、そしてこの霧が一層不気味さを際立てた。




明かりのついたままの飲食店も、人が乗っていたはずの車も、勤め人が歩いていた街路も…今は人の名残さえ感じない。



嫌な汗が背中を伝う。





澁澤龍彦…。



嘗て龍頭構想にて出会った人物。


その人物が、ヨコハマに足を踏み入れた。


そして異能を発動させた。


この霧は澁澤の異能で間違いない。





ズキンッ




『ッ──!!』




まただ……。



突如として私の襲う頭痛。




なぜ、澁澤龍彦のことを思い出すと頭痛がするのか……。



私は頭に手をやりながら必死に考えを巡らせる。



しかし頭痛により、思考が纏まらない。



ズキン、ズキンッ



酷くなる頭痛に苛つきながら、この場にいては駄目だと直感し足を動かす。








向かう場所は……骸砦。


そこに澁澤龍彦は居る……そして治くんも。




この状況を善くするためには、元凶を絶たなければならない。






ガタン




私の右横で物音がした。



感じ取れなかった気配に私は勢いよくそちらを向く。



そこには放置された自動車があった。


そしてその屋根の上に立っている″何か″。



それは人の形をしていた。



目もなく、鼻や口もない、顔はまるでのっぺらぼう。


それは体も同じだった。


全身、薄紫色に塗りつぶされたような、人の形。



それは首を曲げ私を見つめるように俯く。




それは私を見つめると、手のひらを私に向けてくる。



いつも私がそうするように。




空気を薙いで、真っ白な針が私に迫る。




『ッ……!!』



それを咄嗟に避けて、地面に手を付きながら屈む。




私が居た場所には、地面に突き刺さる針。




『あれは……』



私には見覚えがあり過ぎるものだった。




すぐさま、手を人の形をした何かに向ける。

しかし何も起きない。




それどころか、相手が私に手を向けると針が私を襲う。




『嘘でしょ………』




それらを全て避けながら、私は今一度それを見た。



よく見ると、人の形をした薄紫色の何かの左胸の辺りに、赤い結晶が埋まっていた。




『…まさか…』



あれは──【天空の蜂】なのか……。



つまり異能が私の体から分離した、ということか……。



私は勢いよく走り出してその場を去る。




【天空の蜂】は追いかけては来なかった。




まるで逃げる獲物をじっくりと追い詰めるように。

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jumpcontrolbear(プロフ) - 消しゴムクイーンさん» コメントありがとうございます!!そうだったんですか……ぜひ余裕がありましたらDVDでご覧下さい!終始悶えます(笑) (2018年9月9日 1時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
消しゴムクイーン(プロフ) - こんにちは。DEAD APPLE…私、見れなかったんですよ!見たかった……これからも頑張ってください!! (2018年8月15日 13時) (レス) id: b53efceb36 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - なたさん» コメントありがとうございます!!本編の方も読んでくださってるんですね!ありがとうございます!すごく嬉しいです!更新頑張ります! (2018年5月4日 23時) (レス) id: c47121f885 (このIDを非表示/違反報告)
なた - このシリーズめっちゃ好きなのでデッドアップル編まで読めて嬉しいです!これからも頑張ってください (2018年5月4日 22時) (レス) id: a61dc9da8f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:だし丸 | 作成日時:2018年3月23日 18時

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