幕間 1-2 ページ12
遠い昔の織田作の呟きに、太宰は一人、返答する。
またもアリッサムの添えられたグラスの中の氷が音を立てた。
まるで織田作が返事をしたようなタイミングに、太宰は静かな声を向ける。
「織田作、君の云うことは正しい。
人を救う方が、確かに素敵だよ」
太宰のグラスのとなりには、赤と白の二色に彩られた薬のようなカプセルが置いてある。
「……生きていくのならね」
包帯の巻かれた太宰の手が、カプセルにのびる。
丁寧な仕草でカプセルをつまみ、ゆっくりと唇へ運ぶ。
甘い毒リンゴに口吻ける白雪姫のごとく。
毒々しい赤と清らかな白が、太宰の口のなかへと消えた。
太宰は名残惜しそうに席を立つ。
「じゃあ、行くよ。織田作」
別れを告げて、外套のポケットから″何か″を取り出し、カウンターに置いた。
振り返ることなく太宰はバーを去る。
カウンターには──ナイフの刺さった、赤いリンゴがグラスとともに残された。
･
Aが見下ろす先には、昔通ったバーの看板。
それをAは詰まらなそうに、そして寂しそうに見つめていた。
バーの向かいの建物、屋上の端で外套のフードを被り座るA。
下の様子を見ていた目線を上げ、何も無い目の前の空間を見つめる。
『此処に来るのは嫌なんだけどな…』
そんな独り言を呟きながら。
ふと、下の方に人が集まる気配。
そちらに目を戻せば、毎日見ている砂色の外套─太宰と、それを見つめる丸眼鏡に背広─安吾。
それから太宰に銃を向けている人々。
安吾と太宰は言葉を交わしている。
Aはそれを感情のない瞳でただ見つめていた。
太宰が唇を歪めて、児戯を嘲るように、嗤った。
瞬間、太宰の纏う空気が一変した。
得体の知れない恐怖に、安吾の背筋が凍りつく。
秀麗な顔から発せられる悪意。
怪物じみた気配。
溢れ出す威圧感と深淵の闇。
それは安吾だけでなく、Aも感じていた。
安吾と違ったのは、それに恐怖していなかった、ということ。
Aは太宰の嗤う顔を見て、少しだけ、目を細めただけだった。
突如、白い霧が立ち込め辺りを覆う。
安吾や太宰の姿は一瞬にして見えなくなった。
『始まった……』
Aは勢いよく立ち上がり、フードを深く被り直して走り出す。
太宰の近くに居た、安吾とは別の人影にAは小さく舌打ちをした。
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jumpcontrolbear(プロフ) - 消しゴムクイーンさん» コメントありがとうございます！！そうだったんですか……ぜひ余裕がありましたらDVDでご覧下さい！終始悶えます（笑） (2018年9月9日 1時) (
レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
消しゴムクイーン(プロフ) - こんにちは。DEAD APPLE…私、見れなかったんですよ！見たかった……これからも頑張ってください！！ (2018年8月15日 13時) (レス) id: b53efceb36 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - なたさん» コメントありがとうございます！！本編の方も読んでくださってるんですね！ありがとうございます！すごく嬉しいです！更新頑張ります！ (2018年5月4日 23時) (レス) id: c47121f885 (このIDを非表示/違反報告)
なた - このシリーズめっちゃ好きなのでデッドアップル編まで読めて嬉しいです！これからも頑張ってください (2018年5月4日 22時) (レス) id: a61dc9da8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：だし丸 | 作成日時：2018年3月23日 18時
