【文豪ストレイドッグス】お得意サマ 2【双黒】

目の色 ページ40

中原の疑問にAは柔らかい笑顔になる。




『元々私の目は両方とも紫色で、兄は両目が紅色でした。


兄が″獣″として私の異能に紛れていた影響で左目だけ紅色になったんだと思います。


今は、居なくなってしまったから紫色に変わったんですね』




そう云うAは少しだけ寂しそうだった。




「そんじゃあ、元に戻ったってわけか」



『ええ』



Aはにこりと中原に笑いかける。



そんなAを中原はじっと見つめる。




「お前、変わったな」



ポツリ、中原の口からこぼれた。





『え？』



「話し方も雰囲気も、ずっとあった壁みてぇなもんが無くなった。



自分の呼び方とか笑い方とか、他にも色々……」




中原は無表情に告げる。



『…そうかもしれませんね、色んなことがあったから』



「その原因があの青鯖だってことが一番腹立つ」



さっきまでの無表情はどこへやら、一変して中原の顔は思い切り歪んだ。



その変わりようにAは思わず吹き出す。




『フフ、確かに太宰さんのおかげですけど……



中原さんだって私を変えるきっかけになってくれましたよ』



手すりに頬杖をつきながら、Aは目を細めた。





「お前な……そういう顔、誰にでもすんな。


ましてや、お前に気がある男に……」




中原は呆れた声で頭を掻く。





はあ、大きなため息をした後中原は帽子をかぶり直して一歩前に出た。




「そんじゃそろそろ行くわ、仕事溜まってるしよ」




半身をAに向けた中原。



「お前、これからどうすんだ？」




『今まで通り何でも屋を続けますよ。


お得意サマも沢山いますしね』





「あっそ」



中原は煙草を口に戻して大きく吸った。



「じゃあな」



『ええ、森さんにも宜しくお伝えください』




中原はAに背を向けたまま手をヒラヒラと振る。



しかし少し離れたところで足を止めて、再びAの方を向く。




「あの青鯖ンところ嫌になったら何時でも来い、お前なら大歓迎だ」




Aはポカンと口を開け呆ける。



しかし我に返ってフッと笑みをこぼした。




『ありがとうございます。


でも………当分は行かないですよ』




「チッ……そーかい、お熱いこった……」




中原は苛立たしげに吐き捨てて今度こそ去っていった。


あの言葉の中に少しだけ、ほんの少しだけ寂しさがあったのをAは気づいていた。





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