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「大丈夫そう?」
洗濯していたものも乾き
青年は赤いパーカーに手を通す。
ふわっと、私と同じ匂いがした。
彼は小さく頷き
歩き始めたと思ったら、玄関のほうへと向かった。
.
「帰るの?」
聞いたが、彼は何も答えなかった。
私の顔なんて一度も見ないで、ドアを開けて外へ出ていく。
お別れも何もなく、去っていった。
出会って1日も経ってないのに、私の心ごと持っていかれた気分。
全部一瞬だったな。
ぼーっと玄関に立っていると、我に返り寝室へと足を動かした。
ベットに飛び込むと、シーツから青年の匂いが広がる。
どこかで寂しく、1人になってしまわないだろうか。
一匹狼の彼に、私が止める隙はない。
昨日のことは全部夢…そうしよう。
.
私はスマホを手に取り
「伊野尾慧」と表示された人物に連絡を入れた。
メールを送り1分もしないで、電話がかかってくる。
「もしもし」
電話を取ると
嬉しそうで、でも緊張気味な声が聞こえた。
慧『どうしたの?寂しくなった?』
「まぁ、そんなとこ」
慧『誘ってくれてありがと、いつもの所にご飯行こうか』
「うん」と返事して、電話を切った。
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作者名:七瀬 | 作成日時:2020年11月27日 22時